「働かない社員」を簡単にクビにしてはいけない! 昭和の炭鉱労働者に学ぶ、日本人が失った真の「生産性」とは
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かつて福岡県の筑豊地方には多くの炭鉱会社があった。その従業員のなかに「スカブラ」と呼ばれる、従業員同士の“潤滑油”のような役割を果たす人たちがいた。現代社会は「スカブラ」から何を学べるか。
労働者の心を慰める存在だった
かつて、福岡県の筑豊(ちくほう)エリアに炭鉱が多く存在した。
「北部九州を縦貫する遠賀川流域は、かつて我が国最大の産炭地だった筑豊炭田と呼ばれ、膨大な量の石炭を供給することで日本の近代化と戦後復興に大きな貢献を果たした。しかし、1960年代の石炭産業の斜陽化にともなって筑豊地域の炭鉱は次々と閉山し、昭和51年(1976)の貝島大之浦露天掘炭砿の閉山によって、筑豊炭田は終焉を迎えた」(飯塚市の資料より)
当時、たくさんあった炭鉱会社で「スカブラ」と呼ばれている労働者がいた。語源は
・仕事が好かんとぶらぶらしている
・スカしてぶらぶらしている
・スカッとしている
などと定かではない。
彼らは、炭鉱に降りても皆と同じように作業をすることなく、その代わりに、労働者たちを慰めるようなことをしていた。
・面白い話をして皆を笑わせたり
・お茶を出していたわったり
・たまには現場の見回り人を呼び止めてくぎ付けにしたり
することで、労働者を監視から逃した。「効率化」「合理化」の現代において、このような人をどのように感じるだろうか。
排除で生産性が下がった
この話には続きがある。
あるとき、景気が悪くなってリストラをしなければならなくなった。経営者たちは話し合って
「何もしていないスカブラからクビにしよう」
ということになった。「無駄」な人材を排除できたのだから、さぞかし効率が上がったのではと思うかもしれないが、実際はその逆だった。
今まで同じ時間でやれていた仕事が、全然できなくなってしまい、その上、残った炭鉱労働者たちの
「人間関係もギスギス」
したものになったそうである。中国の荘子にある「無用の用」のように、
「一見意味がないように感じるもの」
が、実は重要な役割を担っていたのかもしれない。