あえて今、「マニュアル車」という選択肢 “電動化時代”におけるその存在意義とは
日本ではMT仕様の車種が大幅に減少しており、新車販売に占めるMT車の割合は2%にも満たない。運転に一定の技術や慣れが必要とされ、敬遠される傾向にある。今後どうなるのか。
AT車の進化が開く新たな道

オートマ(AT)車の自動運転技術は急速に発展しており、現在は米国自動車技術会の自動運転レベル3「条件付自動運転車(限定領域)」まで実用化が進んでいる。
自動運転レベル3では、限定された条件下の自動運転システムによる運転が可能になる。具体的には、渋滞時の高速道路などの限定領域において、ドライバーがハンドルから手を離す「ハンズオフ」や、前方を注視していなくても問題ない「アイズオフ」の走行だ。
自動運転レベル3搭載車の第1号は、ホンダが2021年に発表した「レジェンド」である。AT車は自動変速機を備えているため、アクセル・ブレーキ操作を自動化しやすいという特性がある。一方で、マニュアル(MT)車はクラッチ操作やシフトチェンジなど、ドライバーの複雑な運転操作が必要とされるため、自動運転への対応が難しいとされている。
AT車の自動運転には、交通事故の削減、渋滞緩和、高齢者の移動支援など、さまざまなメリットが期待されている。ただし、実現には技術的・社会・法律的な課題が残されている。
センサー類や人工知能(AI)のさらなる進化、高精度3D地図の整備、交通ルールの見直し、事故時の責任の所在の明確化などが必要とされている。
自動車メーカー各社は、AT車の自動運転技術の研究開発を加速させており、より高度で安全な自動運転の実現を目指している。
一方で、MT車も運転の楽しさや操作の面白さを求める少数派ユーザーに支持されており、AT車とのすみ分けが進むと予想されている。AT車の自動運転化が進む中で、MT車の存在価値や役割についても注目が集まっている。