「生きてるうちに整備して」 那覇市“LRT導入”で市民の意見公募へ “東京・大阪並み”の渋滞緩和なるか?
慢性的な交通渋滞に悩む沖縄県那覇市は、2024年度にLRT導入に向けて市民から意見を公募することを決定した。今後どうなるのか。
財源確保など課題も山積

栃木県宇都宮市と芳賀(はが)町で2023年8月に運行を始めたLRTの「ライトライン」が予想以上の滑り出しを見せ、全国の自治体がLRTに注目するようになった。那覇市以外では和歌山県和歌山市が2024年度から導入検討に入る。
全国初となるLRTが運行を始めたのは、2006(平成18)年の富山県富山市だった。この際も神戸市や香川県高松市など多くの自治体が導入を検討したが、開業に踏み切ったのは宇都宮市と芳賀町だけだった。財源や採算性の確保が問題になったためだ。
那覇市の2024年度一般会計当初予算は1748億円。過去最大の予算額となったが、2296億円の宇都宮市より規模が小さい(約76%)。富山市のように既存の鉄道路線をLRTに転換するわけでなく、専用軌道部分は用地取得が必要になる。
那覇市は全国の中核市平均に比べ、借入金残高が多く、財政調整基金(自治体の年度間の財源不均衡を調整するための積立金)の残高が少ない。LRTは地下鉄やモノレールより初期費用が安いとはいえ、那覇市の財政にかかる負担は軽くない。
併用軌道の敷設で車線が減少することへの不安もある。沖縄県交通政策課は
「LRTが通勤客や観光客を集められれば、渋滞緩和に役立ちそうだが、住民らが車を選択し続ければ、車線減少が渋滞を悪化させる可能性もある」
と見ている。
日本全体が人口減少時代に突入するなか、沖縄県は出生率が高く、年間3万人前後の移住者がいるため、人口減少の波が全国平均より緩やかになると予測されている。その一方で、車の台数は今後も増え続ける見通し。渋滞でパンク状態の道路事情を改善するには、公共交通の充実が欠かせない。