「LRT」と「路面電車」は何が、どう違うのか? 宇都宮LRT開業で考える
利用者数、予想の「1.4倍」
日本初の全線新設の次世代型路面電車(LRT)として以前から注目されていた栃木県宇都宮市~芳賀町間のLRT(愛称:ライトライン)が開通し、1か月以上が経過した。開業から1か月間の利用者数は、当初予想の1.4倍だという。
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筆者(森口将之、モビリティジャーナリスト)も開業後に4回現地を訪れ、通勤通学や買い物からJリーグ観戦まで、幅広い利用があることを確認したし、当初は多数を占めていたいわゆる「乗り鉄」が減りつつあるのに利用者はそれなりにいて、地域に定着しつつあることがわかった。
ところでライトラインでは、一貫してLRTという呼び名を使っていて、
「路面電車」
とはいっていない。でも、国内の既存の路面電車のなかには、ライトラインに近いモダンなデザインの車両を走らせているところもある。では、LRTは路面電車と何が違うのか。
路面電車との違い
路面電車はその名のとおり、道路を走る電車のことで、ヨーロッパのトラムも似たような存在だ。馬車鉄道の馬をモーターに置き換えたもので、トラムは19世紀後半にドイツでまず走り始め、やや遅れて日本でも京都で路面電車が運行を始めた。
これに対してLRTは1970年に北米で考え出された。クルマ社会ゆえに問題となっていた大気汚染や都心のスラム化に歯止めをかけるのに、最適な公共交通を考えた結果、小型軽量の電車をひんぱんに走らせることにしたのだ。
日本では第2次世界大戦後にクルマが急激に増えたことで、横浜や名古屋など多くの都市で路面電車が廃止されたが、逆にLRTは、そのクルマが増えすぎて都市問題や環境問題が深刻になった結果生まれた。誕生の理由が対照的なのである。
その後は、トラムや路面電車もLRTと同じようにアップデートが進み、車両や停留場のバリアフリー化、バスやマイカーからの乗り換えがしやすいトランジットセンターの用意などが進んだ。そのため、いまでは同じような内容になっている。
でも、ライトラインは最初からこういった要素を全て備えて開業したので、路面電車よりもLRTという呼び名のほうがふさわしいといえる。