群馬「上信電鉄」がどう見ても「世界遺産」化にふさわしい理由

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上信電鉄は、1895年12月27日、県南西部の下仁田地域で当時出荷量が増加していた生糸の輸送路近代化の要請を受け、上野鉄道として設立された。1897年9月25日、南蛇井~下仁田間が開業し、全線開業した。

観光振興の影

重要文化財・碓氷第三橋梁(画像:大塚良治)
重要文化財・碓氷第三橋梁(画像:大塚良治)

 仮に安中市や上信線沿線の来訪者が約82万人増加し(安中市観光入込客数約51万人増(『あんなか まちづくりビジョン2024(第3次安中市総合計画)(案)』および2022年度の富岡製糸場の入場者数約31万人が2倍増とそれぞれ想定)、そのうち東京都からの来場者が10.1%(『群馬県 令和4年(2022年) 観光入込客統計調査報告書 概要』)、さらにそのうちの10.5%(高崎商科大学『富岡製糸場ならびに周辺における観光客満足度調査 簡易報告書(2022年調査)』が提示した富岡製糸場への鉄道利用割合)が鉄道を利用すると仮定すると、JR東日本は3千万円程度の増収を手にすると推定される(≒東京~高崎間のJR往復大人普通運賃3,960円 × 約82万人 × 10.1% × 10.5%で計算)。

 上信電鉄についても、富岡製糸場と旧上野鉄道~を回遊する観光客の増加が予想され、7000万円程度(≒1日乗車券2260円 × 約31万人 × 10.5%)の増収があると推定される。

 碓氷峠~の世界遺産登録を目指す方法として、安中市の齊藤課長は

「国内の他地域の現役鉄道や鉄道遺産と連携し、複数の遺産での登録も検討する」

と説明する。「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」のように、複数の構成資産によりひとつの世界遺産価値を証明する「シリアル・ノミネーション」の手法の活用も視野に入る。

 齊藤氏も述べるとおり、世界遺産には現役の鉄道も登録できる。海外では「ゼメリング鉄道」(オーストリア)などの複数の現役鉄道が世界遺産に登録されている。日本でも世界遺産候補になりうる鉄道はいくつもある。

 例えば、日本では貴重な通年営業している軽便鉄道「四日市あすなろう鉄道内部・八王子線」「三岐鉄道北勢線」や日本最初の鉄道として新橋-横浜(桜木町)間で開業した東海道本線などを挙げることができる。

 その意味で、JR東日本による高輪ゲートウェイ駅周辺の開発にともない出土した「高輪築堤」について、ユネスコの諮問機関であるイコモスの日本支部に相当する「日本イコモス」が同社に対して、

「世界文化遺産として国際社会が評価する可能性がある」

などとして現地全面保存を求める要望書を公表したことの意味は大きい。国も迅速に動き、史跡「旧新橋停車場跡」に高輪築堤を追加指定し、2021年9月17日に「旧新橋停車場跡及び高輪築堤跡」として告示された。

 そして、上信電鉄自体の世界遺産化も検討に値する。同社が所有する鬼ヶ沢橋梁が世界遺産候補になった事実は、上信線の高い価値を裏書きする。なぜなら、鬼ヶ沢橋梁よりも前に開業した区間があるからである。古くから使われている木造駅舎が残されている駅も多い。上信電鉄の宮川取締役は

「世界遺産化へ向けた話を沿線自治体から頂ければ、積極的に協力したい」

と話す。

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