JRはなぜ「直通列車」を削減するのか? 国鉄分割がなかったら今より多く存続していたかもしれない

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首都圏では鉄道会社間の直通運転が盛んなのに、なぜJRは直通列車を減らすばかりなのか。いま一度考える。

直通列車が削減されるJR

飯田線桜町駅を出発するJR東日本車。2023年9月5日撮影(画像:大塚良治)
飯田線桜町駅を出発するJR東日本車。2023年9月5日撮影(画像:大塚良治)

「首都圏では、異なる鉄道会社間の直通運転が盛んなのに、なぜJRでは直通列車が削減されるばかりなのか疑問に思っている」――。筆者(大塚良治、経営学者)の知人から15年以上も前に投げ掛けられたこの問いかけは、今もJRについて考える際の起点となっている。実際、直通列車が廃止された区間もある。実際、JR会社間を直通するそのほかの特急や急行は、廃止や区間短縮で多くが整理された。

 普通列車についても、会社間直通列車の廃止や減便が一部の地域で実施されている。JR西日本広報部によると、国鉄分割民営化当初設定されていた大糸線南小谷をまたぐ普通列車は1998(平成10)年12月8日のダイヤ改正で廃止され、しばらく残っていた高山本線猪谷駅をまたぐ普通列車も2003年10月1日のダイヤ改正で姿を消した。

 2004年10月16日のダイヤ改正では、東海道本線の熱海を越える直通列車が、53本から20本へ削減された。2005年10月1日のダイヤ改正では、下関を越えて本州と九州を直通する普通列車が廃止された。

 JR九州は

「利用状況の変化にともない相互乗り入れするメリットが薄れたため、下関駅での乗り換え体系を確保することで相互乗り入れを取りやめた」(広報部)

とするものの、

「沿線自治体やお客さまから列車ダイヤについてのご意見・ご要望はいただいている」(同)

と説明する。

『関門地域(下関市・北九州市)の未来をつなぐ 下関・北九州道路』(2022年7月)によると、同市と下関市の間を1日約1万人の通勤・通学者が往来し、下関⇔戸畑・若松方面などの通勤・通学は増加傾向にあるという。

 本州と九州の間を直通する普通列車を復活することで、さらなる交流人口・関係人口の増加を後押しできる可能性がある。

 しかし、山口県西部⇔九州間の直通列車の増便などを求めて1996年9月2日に設立された関門シティ電車運行実現期成同盟会は、

「『関門JR時刻表』配布による利便性向上に力を入れて活動している」(下関市都市整備部交通対策課)

と述べるにとどめる。

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