福島・阿武隈急行に「バス転換」が急浮上したワケ 他の県内3セク鉄道より“輸送密度”高いのになぜなのか

キーワード :
,
1995年のピーク時と比べ、輸送人員が約4割の水準にまで落ち込んでいる阿武隈急行。今後どうなるのか。

阿武隈急行を取り巻く状況

福島駅阿武隈急行線ホーム。飯坂線と共用する(画像:大塚良治)
福島駅阿武隈急行線ホーム。飯坂線と共用する(画像:大塚良治)

「令和元年東日本台風や2021~2022年の福島県沖地震による運休、コロナ禍による利用減などにより急速に経営が悪化し、関係者の間で協議するなか、約2年をかけて阿武隈急行の在り方を順次取りまとめる流れにつながった」

 冒頭の発言は、筆者(大塚良治、経営学者)が「阿武隈(あぶくま)急行線在り方検討会」(以下、検討会)設置の背景について電話取材した際、検討会に参加する

・福島県(生活環境部生活交通課)
・宮城県(企画部地域交通政策課)

の担当者から得た回答の一部である。

 検討会は、阿武隈急行の抜本的な経営改善策を話し合うため、同社や関係自治体、福島交通、有識者などが参加する会議で、2023年3月29日に初回会合が開催された。

 阿武隈急行は、阿武隈急行線福島~槻木間54.9kmを運営する第三セクター鉄道事業者である。主な株主には、

・福島県(出資割合:28.0%)
・宮城県(25.6%)
・福島交通(20.0%)
・沿線自治体

などが名を連ねる。

 阿武隈急行の千葉亨総務営業部長によると、同線の2022年度の輸送人員は約128万9741人で、前年度より40万9627人(24.1%)減少した。ピークの1995(平成7)年度の約325万1000人と比べると、約4割の水準にまで落ち込んでいる。

 千葉部長は

「梁川(やながわ)以南は福島方面、丸森以北は仙台方面への通勤・通学利用などの日常利用が中心になっている」

と、主に地域輸送機関としての役割を担っている現状を説明する。

 同線はJR東北本線と並行するが、

「福島県側では、東北本線から離れている伊達市保原(ほばら)町・梁川町などの地域から福島駅へ公共交通で向かうルートとしては、阿武隈急行線が主要なルートであり、福島駅に近い区間の利用は比較的多い」(福島県生活環境部生活交通課)

という実態がある。

全てのコメントを見る