F1業界は閉鎖的な「ムラ社会」 近年は売り上げ至上主義が支配、今後大丈夫なのか
利益争奪戦の渦

F1の今後を占う大きなトピックのひとつが、アンドレッティ・フォーミュラ・レーシングが11番目のチームとして参戦できるかどうかだったが、2025年と2026年の参戦は認められないことになった。
F1を主催する国際自動車連盟(FIA)は参入を認めたが、F1チームは当初から利益配分が希薄になると否定的だった。F1の運営や統括をしているフォーミュラワン・マネジメント(FOM)は声明のなかで、「11番目のチームはチャンピオンシップに価値をもたらさないということが立証された」と理由を述べている。
F1の天文学的なコストを考えれば、各チームのトップが利益の減少を恐れてこうした姿勢をとるのは理解できる。ただ、その基本姿勢は多くの利害関係を抱え、部外者を受け入れなかったかつての日本の「原子力ムラ」に似ている。いわば
「F1ムラ」
である。
カギとなる「コンコルド協定」
現在、F1は10チーム20台で行われているが、歴史を振り返ると、
・特定のレースだけを走るスポット参戦
・1台のみのエントリー
などがあった。1989年には20チーム39台というあまりの台数に予選前に予備予選が行われたり、逆に資金不足で撤退したチームも数え切れないほどあったりした。
多大な費用がかかったため、その時々で10チームや11チームに落ち着くことが多く、2017年からは現在の総勢10チームで開催されている。カギとなるのは、
・FIA
・各チーム
・運営、放映権、マネジメントの権利を持つフォーミュラワン・グループ(FOG。FOMはFOGの一部)
の間で交わされた、商業権の管理に関する協定「コンコルド協定」だ。
この契約は現在、2021年から2025年まで締結されている。契約では、チーム間の利益配分も規定されており、10チームは2025年まで1レースも休むことなく参戦する義務があるとされている。
出場できるチーム数は最大12チームであり、受取賞金の希薄化を防ぐため、新チームはそれぞれ2000万米ドルを各チームに支払わなければならない。FOGの目標は、各チームの財政を安定させ、安定的に出場できるようにすることである。