F1業界は閉鎖的な「ムラ社会」 近年は売り上げ至上主義が支配、今後大丈夫なのか
参戦者増加の意義
リーマンショック後、F1撤退を考えたチームもあったが、なんとか残った。また、現在のF1の繁栄は、厳しい時代を乗り越えてきた自分たちの努力のたまものだという自負もある。
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そのため、たとえ新参者がこれまで以上の利益をもたらすとしても、心情的には受け入れたくないのだ。これは昔の日本の“ムラ社会”と大差ない。加えて、日本の苦境の元凶である少子化が、いかに経済社会の活力を失わせつつあるかを、日本人は今、身をもって体験している。つまり、参戦台数が20台より22台のほうが新陳代謝がよくなることはいうまでもない。
世の常だが、新陳代謝が悪くなると、社会や組織は衰退することが多い。日本はバブル崩壊後に一気に没落し、30年たった今も引きずっている。米国も中国やグローバル・サウスの台頭で相対的な地位は低下しているが、日本と違ってトップを走り続けているのは、移民を受け入れ、GAFAに代表されるようなベンチャー企業を生み出す文化があるからだ。
F1への参入が容易でないのは事実だ。トヨタでさえ参戦はできたが、際立った結果を出せず成功とはいえなかった。しかし、既得権益を手放したくないがために「F1ムラ」に固執し、新勢力を認めないような閉鎖的な態度をとるのは、理解はできるが肯定はできない。
新型コロナウイルスによって「利他の心」という言葉がクローズアップされたが、F1チームはアンドレッティに対して利他的であることを選ばなかった。彼が次に参戦するなら2028年だが、そこまで情熱を持ち続けられるだろうか。チームは今度こそ彼らを受け入れてくれるのだろうか。また、対外的には「新規参入をしようとするな」という誤ったメッセージと受け取られかねないことも懸念される。