ホンダF1復帰に感じる疑念と矛盾 40年「エンジン車全廃」いずこへ、ビジネスとしてのF1に正当性はあるのか

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ホンダは、2026年シーズンからF1へのパワーユニット供給に復帰することを公式に表明した。復帰という、従来の施策からの180度の方針転換は何を意味するのか。

外野が感じる「疑問」「困惑」

ホンダのウェブサイト(画像:本田技研工業
ホンダのウェブサイト(画像:本田技研工業

 2023年5月24日、ホンダは2026年シーズンからF1へのパワーユニット供給に復帰することを公式に表明した。

 新たなパートナーはアストンマーティン(英国)である。ご存じの通りホンダは2020年10月の公式発表で、2022年シーズンからF1へのパワーユニット供給を中止するとしていた。理由は、世界の動向であったカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)社会へとスイッチするための資金集中というものだった。

 非公式ではあるが、ホンダはそれまでF1用パワーユニット開発に

「年間1000億円規模」

の予算を計上していたといわれている。この数字はホンダの様な大企業にとっても決して軽い負担ではない。そのためにF1からの撤退を決めたという話だった。

 そして今回の復帰発表である。

 実際のところ撤退の理由として大前提に掲げたカーボンニュートラル施策について、企業として完全に方向性が定まったとは思えない。ホンダは2040年までに市販車を内燃機関モデルからバッテリー式電気自動車(BEV)および燃料電池車(FCV)への完全転換を目指すとしている。しかし現在のところそのめどは立っていない。

 そうした状況のなかでのF1への復帰という、従来の施策からの180度の方針転換は何を意味するのか。外野の間には正直、

「疑問や困惑」

が生じていることは否めない。

 とはいえ、ホンダの会見によれば復帰の理由は全て明確であるという。まずはカーボンニュートルとの関連性だが、2026年からのF1では水素と二酸化炭素を原料とする合成燃料のみの使用となる。

 この燃料はいわゆるe-fuelであり、ホンダが航空分野での実用化を目指して開発中のSAF(持続可能航空燃料)と製造法的にはほぼ同じもの。開発の方向性として矛盾はない。

 また同じく、2026年からはいわゆるハイブリッドによる総出力に対する電動化比率が現状の約20%から50%に強化される。これについてはより高効率のバッテリーおよび電動モーター、さらには関連機器の開発が必須となる。

 すなわち、ホンダが現在実用化に向けて開発中のeVTOL(イーブイトール。小型の電動垂直離着陸機)にも応用できる技術に関連している。もしかしたらこれらの技術は市販BEVやFCVにも応用できるかもしれない。すなわちこちらも矛盾はなく、技術的な親和性は高いということである。

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