京葉線「ダイヤ改悪」はなぜ防げなかったのか? JR・行政の間に横たわる“構造的問題”を考える

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JRの首都圏区間のダイヤは、私鉄に比べてわかりにくく、サービスレベルも劣る。沿線自治体もそれを感じて改善要望を出しているが、抜本的な改善には至っていないケースが多い。

JR・私鉄、ダイヤの作り方の違い

京葉線(画像:写真AC)
京葉線(画像:写真AC)

 私鉄では速達列車と各駅停車で乗客の遠近分離をうまくやっている路線は多数あり、例えば田園都市線ではむしろ夕ラッシュの急行を増やし、朝も都心寄りが各駅停車の準急を入れたが、郊外の区間は急行運転を据え置くなどして、混雑分散と郊外への速達サービスを両立させている。

 そういうと、京葉線の場合は直通先の武蔵野線、内房線、外房線や、蘇我駅で接続する総武快速線直通の快速との調整などが煩雑だから他線区の事例をそのまま当てはめられないといった反論もあるかもしれない。

 だが私鉄系では副都心線を介して東武、西武、東京メトロ、東急、相鉄といった、どの会社も自社線内や副都心線以外の直通先との調整など複雑な条件のなか、ダイヤのサイクルを30分単位にし、その30分のなかで急行は毎時何分に出す、各駅停車は毎時何分に出すといった具合に、決まったパターン通りの運行で混雑分散と郊外への速達サービスを両立させている。というより、決まったパターンやルールがないとかえって調整しづらいからこそそうしているともいえる。

 そしてJR東日本のような大きなネットワークを持っている会社こそ、例えば首都圏全体を15分単位のサイクルでダイヤの中身を決めるといったパターンやルールを、トップが列車ダイヤの知識を付けた上で決めて周知するべきだ。

 現にJR西日本の関西圏ではこれが実現している。会社が違ってもできることを、同じ会社線内で完結しているJRが京葉線と関連のある線区との調整が困難で各駅停車化しているとしたらおかしな話である。JR自ら

「うちは社内調整や統一ルールができない会社」

と宣伝しているようなものである。

 京葉線沿線に住む交通評論家の佐藤信之氏は

「私鉄はもうけなきゃいけないのでサービスのいいダイヤにしようとするが、国鉄は安全に運べさえすればいいという発想で、JRになってもそれは変わらず、パターン化していないのは(輸送力の不足があれば)、既存のダイヤに改正の都度、既存列車の隙間に増発するという考え方。だから間隔がバラつきやすい」

という。

 それとは別の問題として、JRの中期経営計画、コロナ禍での見直しで、要員の削減数を記載しており、いつまでに何人減らすといってしまっているので、それを実現するために支社ごとに目標実現を求めているのではないか、と佐藤氏は続ける。

 私鉄は百貨店や不動産などの関連事業の収益力や集客力を高めるために鉄道サービスを頑張る傾向にある。JR東は私鉄をまねて関連事業に精を出しているが、それだけを頑張ればいいという勘違いをして猛進している。

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