航空業界の脱炭素化進まず! 切り札の「バイオジェット燃料」、民間企業にはコスト高すぎな現実
持続可能な燃料への転換

世界の運輸システム全般を見ると、いわゆる脱炭素化の分野で最も遅れているのが航空分野といわれている。特に大型機による長距離輸送では、脱炭素化の見込みはほとんどない。
これは、航空機の動力がガスタービンのみであり、大量の燃料を消費すると同時に大量のCO2を排出していることによる。ちなみに、
・ジェット旅客機/輸送機に使われている「ターボファンエンジン」
・中型機や小型機に多いプロペラ機に使われている「ターボプロップエンジン」
・ヘリコプターに使われている「ターボシャフトエンジン」
のいずれもガスタービンエンジンの“仲間”である。
現在、民間航空で旅客輸送や貨物輸送に使われているガスタービンエンジン搭載機に使われている燃料は、欧米ではジェットフューエル、JIS規格では航空タービン燃料油と呼ばれている。
原油を原料として精製し、必要に応じて添加剤を加えて製造され、その組成は灯油に近い。空港などで稼働するガスタービンエンジンが灯油ファンヒーターの燃焼臭に似ているのはこのためである。
冒頭で述べたように、このような航空用ガスタービンエンジンの排ガス低減対策は、現在のところ行われていない。騒音低減や航続距離延長のための燃費向上などの対策は行われてきたが、それはあくまで経済性を追求するためのものであった。
しかし近年、この状況は脱炭素化の観点からは望ましくないとの評価がなされている。しかし、現状では航空機の動力そのものをガスタービンからシフトさせることはできない。そこで、
・燃料の生産から使用までをトータルで評価し、炭素排出量がゼロに近い燃料を許容範囲とする
・原油とは異なる原料から作られる持続可能な航空燃料(SAF)を燃料として導入する
という結論が導き出された。
SAFとはいったい何なのか。製造原料が原油由来でないとしたら、原料はいったい何なのか。