100年の鉄工所を捨て不動産業へ アライプロバンス【短期連載】素人に倉庫ビジネスは可能か(2)
「物流でもやろうか?」では成功はおぼつかない
「素人に倉庫ビジネスは可能なのか?」というテーマで取材をしたいと、筆者が同社にコンタクトを取った時、新井氏は「もしかすると、あなたの望んでいる記事の方向性と、私どもの考えは異なるかもしれませんが」と心配をしてくださった。
それはそうだろうと思う。同社は、いわば素人からスタートし、2021年10月に浦安物流センターを竣工し、2024年には葛西物流センターの竣工を予定している。人によっては、「素人でも倉庫ビジネスができるんだ!?」と思うかもしれない。
断言するが、同社に関し、この認識は間違いである。
同社は製造事業から撤退して以来、本気で倉庫ビジネスに取り組むべく、情報を収集し、物流不動産ビジネスを学び、そして同社の強みをどのように浦安・東葛西の倉庫に活かすべきなのか、模索し続けてきたのだ。その意味で、今の同社は、物流不動産ビジネスの素人ではない。
「『物流不動産って利回りが良いんでしょ?』とか『物流でもやろうか……?』くらいの気持ちでは、倉庫ビジネスなど絶対に取り組むことはできません」──新井氏も断言している。
倉庫に転用できる広大な土地を所有する地主が、倉庫を建てたいという事業者に対し、土地を売却する、もしくは土地を貸すというのは、もちろん可能であろう。だがそれは、「倉庫ビジネスに参入する」ことではない。倉庫ビジネスに参入するのであれば、アライプロバンスのように、しっかりと勉強し、素人から脱却しなければならない。
「土地があるから、倉庫を建てれば後はなんとかなるんじゃないか?」──倉庫ビジネス、物流不動産ビジネスは、そんなに甘いものではない。そもそも、その程度の甘い考え・スタンスでは、物流不動産ビジネスが持つ“本当の旨味”にはたどり着けない。
最終話では、倉庫ビジネスの難しさを挙げつつ、物流不動産ビジネスの旨味について考えていきたい。