100年の鉄工所を捨て不動産業へ アライプロバンス【短期連載】素人に倉庫ビジネスは可能か(2)

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「素人に倉庫ビジネスは可能か?」第2話は、異業種から倉庫ビジネスへのチャレンジをしているアライプロバンス(旧 新井鉄工所)が、物流不動産への参入を果たした経緯から、テーマを深耕する。

歴史と技術を備えた新井鉄工所が、物流不動産ビジネスへの転身を決意した背景

2021年10月に竣工、延床面積約1万坪のアライプロバンス浦安物流センター(坂田良平撮影)。
2021年10月に竣工、延床面積約1万坪のアライプロバンス浦安物流センター(坂田良平撮影)。

 2021年10月、千葉県浦安に約1万坪の物流施設を竣工させたアライプロバンス(東京都墨田区)は“総合不動産業”を名乗る。しかしその前身である新井鉄工所は、1903(明治36)年に創業した老舗の金属加工メーカーであった。とりわけ、石油掘削機器の分野では、高い技術力が世界から支持されていた。

 鉄は「産業の米」──第二次世界大戦後、鉄鋼業は日本の高度経済成長を支える産業として、このように称された花形産業であった。しかし昨今、鉄鋼業はかつての勢いを失っている。2012年、新日本製鉄と住友金属工業が合併し、新日鉄住金(現日本製鉄)が生まれたことは、これまで基幹産業として日本経済を支えてきた鉄鋼ビジネスの変化を告げるメルクマールとなった。

 新井鉄工所は、チャレンジ精神を旨としていたからこそ、技術を研鑽し続け、金属加工ビジネスにおいても、実績を出してきた。だが、時代の変遷により、鈍化してきた石油掘削機器の製造が国際競争力を失った今、現業を継続するか、それとも思い切って異業種への転身を図るか、考え始めたのは経営者としては当然の判断であろう。

 新井鉄工所は、千葉県浦安市の海側、鉄鋼団地と呼ばれる場所と、東京都江戸川区東葛西に工場を構えていた。浦安は約4500坪、東葛西は約1万6000坪という、どちらも広大な土地である。

 奇跡の土地──アライプロバンス 代表取締役専務 新井太郎氏は、浦安、東葛西の二つの土地を、このように称する。国内最大の消費地である東京23区内と、それに隣接する地域において、もはやこれだけまとまった土地が不動産マーケットに登場する機会は少ないだろう。

 物流がさまざまな課題を抱えていること、特にBtoC配送における最後の配送の担い手が不足しているラストワンマイル問題など、物流が課題を抱えていることは、新井氏らも知っていた。だからこそ、浦安、東葛西の土地に倉庫を建て、物流不動産ビジネスに参入しようと考えたのだ。

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