超高齢社会の現実! 「介護送迎」で事故・トラブルが絶えない根本的理由とは
介護業界の送迎事故が後を絶たない。問題の根本解決に必要なことは何か。
介護業界の課題
介護業界の送迎事故が後を絶たない。
2023年9月、埼玉県で介護施設利用者ふたりが死亡する事故があった。ドライバーは75歳のアルバイトだったが、送迎専任職員だった。2022年、福岡市の65歳女性の介護施設責任者が送迎を担当し、高校生と衝突した。普段の介護業務による疲労も事故の要因になったという。また、介護・福祉施設までの送迎は「普通自動車免許」で可能なため、介護職員が担当することが多いことも報道された。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングによる2022年の報告書(厚生労働省委託事業)では、介護送迎の問題点として次の点が指摘されている。
・ドライバー採用が困難
・送迎業務が負担であり、介護専門職が担うことが多い
・駐車スペースがない、道路が狭いなどの道路事情
上記の課題を解決するため、国土交通省と厚生労働省は共同で
「公共交通機関を活用した、福祉・介護事業所の利用者送迎」
「介護や福祉施設の輸送車両を共有し、空き時間を活用して地域の輸送力を高める」
を検討中だ。プロドライバーは上記の問題を解決できる可能性が高いし、福祉車両を共有できれば効率も向上するだろう。
この問題の真相を検証するため、筆者(伊波幸人、自動車ライター)は143件の独自ウェブ調査や関連資料を調べた。その結果、介護施設の利用者送迎には多くの課題があることがわかった。本稿では、介護分野における送迎の実態をリポートする。