JAL「水素航空機」開発 海外3社と提携も、インフラ&コストにただよう“一抹の不安”

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JALは11月16日、将来の航空機運航に向けた脱炭素化計画の一環として、水素燃料電池航空機の実用化に向けた新たな国際共同事業に着手すると発表した。

技術的挑戦と未来

JALが協業するH2FLY GmbH、ユニバーサルハイドロジェン、ゼロアヴィア(画像:JAL)
JALが協業するH2FLY GmbH、ユニバーサルハイドロジェン、ゼロアヴィア(画像:JAL)

 しかし、現時点では課題も多い。H2FLYの最初の燃料電池試作機「HY4」は、早くも2016年に初飛行に成功したが、その形状は3胴単発4人乗りの実験機にすぎない。

・最高速度:時速約200km
・高到達高度:約2000m
・最大航続時間:3時間(速度条件などは未公表)

とされているが、いずれにせよ商業利用にはまだ至っていない。

 H2FLY社の公式見解では、今後数年以内に40人乗りクラスで最大航続距離1240マイル(約2000km)の航空機を開発中とのことだが、これはかなり楽観的な見通しであり、実現は容易ではないだろう。

 このことは、同じく協業相手であるゼロアヴィアの開発計画にもはっきりと表れている。同社は2025年末までに9~19人乗りクラスで最大航続距離300マイル(約483km)、その後、2027年までに40~80人乗りクラスで最大航続距離700マイル(約1126km)を達成する予定である。これらの数値は、前述のH2FLYの数値と比較して、ある意味、現在および近い将来の技術的到達点の限界を評価したものである。

 もちろん、H2FLY計画が不可能かどうかは誰にもわからない。

 このような開発計画や見通しの場合、単独での試作研究開発の場合は、資金提供者がそのような不確実性を受け入れても問題はない。ただし、国際的な協業の場合はそうもいってはいられない。特にJALの株主にとっては、先行きが不透明な状況での投資は不安以外の何物でもないだろう。

 ここで、現在計画されている機体が実際に無事に完成したとして、その商業運航に関わる問題に目を向けてみよう。燃料電池/電気モーターの稼働には水素の安定供給が不可欠である。

 現在運航されているJALのターボプロップ機のスペックは、ATR42型機(48人乗り、航続距離1326km)、ATR72型機(70人乗り、航続距離1528km)、DHC-8型機(50人乗り、航続距離2367km)である。いずれにせよ、これらは主に国内の短距離路線で使用されている。主な就航路線は、国内の短距離路線や離島路線である。

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