トラック業界だけじゃない! 「海運業界」も深刻な人員不足、内航船員30年で“7割減” だが月収は「平均52万円」だ
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内航活性化3法の影響

また、このときすでに、労働環境の改善も検討されている。1993(平成5)年に運輸省がまとめた「内航船員不足問題を考える懇談会」の報告書では、船員の労働環境改善のため以下の提言がなされている。
・海上労働の特殊性を考慮した賃金体系の構築
・内航船員の労働時間短縮と休日・休暇の増加
・船員の荷役作業の軽減
・船内居住区の拡大と生活設備の充実
このように、船員不足に対しては、官民ともに積極的に解決策を模索していた。しかし、1990年代に入ると景気が後退し、輸送量の減少により船員の余剰が新たな問題として浮上した。結果、船員不足への対策は一時停滞したが、その間も船員数の減少は続いている。前述の数値を改めて記す。
・1980(昭和55)年時点:6万3208人
・1990(平成2)年時点:5万6100人(11%減)
・2000年時点:3万7058人(41%減)
・2022年10月時点:2万1092人(67%減)
内航船員不足が再び大きな問題となったは、2005年4月に施行された内航活性化3法の影響である。この法律は、船員法・船員職業安定法・内航海運業法の一部を改正し、参入要件の緩和や船員派遣事業の制度化を含むものだった。また、安全運行の確保を目的として労働時間の見直しも行われた。
特に重要な変更点は、内航船の「安全最小定員」の設定である。199総トン型の船では従来ふたりの船員で運航可能だったが、改正後は4人(甲板部3人、機関部ひとり)の配乗が必要になり、499総トン型では4人から5人(甲板部3人、機関部ふたり)へと増員が求められた。
2006年にはさらに、航海当直に立つ船員のうち少なくともひとりが6級以上の海技免状(海技士の国家資格)を保持している必要があるとされた。これは、豊富な経験を持つ甲板長などが当直を担っていた内航船の運航体系に大きな変化をもたらした。