トラック業界だけじゃない! 「海運業界」も深刻な人員不足、内航船員30年で“7割減” だが月収は「平均52万円」だ

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モーダルシフトの推進にともない、トラックに代わる輸送手段として注目されているのが海運である。しかし、海運業界も人手不足に直面していることは、意外に知られていない。

船員減少の背景

出港する内航貨物船(画像:写真AC)
出港する内航貨物船(画像:写真AC)

 モーダルシフト(自動車による貨物輸送を、環境負荷の少ない鉄道や船舶に転換すること)の推進にともない、トラックに代わる輸送手段として注目されているのが海運である。しかし、海運業界も人手不足に直面していることは、意外に知られていない。

 近年、内航船(日本国内の貨物輸送にのみ使用される船)では、船員不足により、スケジュール通りに運航することが難しくなっている。1980(昭和55)年時点で6万3208人の船員数は、

・1990(平成2)年時点:5万6100人(11%減)
・2000年時点:3万7058人(41%減)
・2022年10月時点:2万1092人(67%減)

まで減少、高齢化も深刻だ。

 船員が不足する背景には、主にふたつの理由がある。

 ひとつは、「船員が日本人に限定されている」ことである。外航船(国際航海に従事する船)では外国人船員の採用が一般的だが、内航船は異なる。これは

「カボタージュ制度」

と呼ばれる規制によるもので、国家の安全保障、安定した輸送、海技の伝承を目的に設けられたものだ。日本では船舶法第3条により、

「法律若しくは条約に別段の定めがあるとき、外国籍船は海難若しくは捕獲を避けようとするとき又は国土交通大臣の特許を得たとき以外は、日本国内の港間における貨物又は旅客の沿岸輸送を行うことが出来ない」

として定めている。

 この制度は、とりわけ安全保障の面から国際的な常識になっている。船が自国船籍かつ、船員が自国民でなければ有事の際に支障を来すためだ。有事の際に国は、日本船籍の船に海上運送法の航海命令、国民保護法の従事命令などを出すことができる。

 平時でも、物流を外国船に委ねることは

「生活物資の安定輸送」

を危険にさらす恐れがある。そのため、世界ではカボタージュ制度が常識となっている。ところが、現在は、この“変えられない常識”が人手不足を生んでいるのだ。

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