鹿児島県「桜島フェリー」大幅運賃値上げに見る、地方生活路線の苦難 今後の活路はどこにあるのか?

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人口減少による交通インフラの維持が課題となるなか、鹿児島県の生活路線である「桜島フェリー」が大幅な運賃値上げを余儀なくされた。その背景にあるものとは。

鹿児島市への編入と赤字の始まり

桜島(画像:写真AC)
桜島(画像:写真AC)

 2004(平成16)年11月、桜島町は鹿児島市に編入され、桜島フェリーは市営に移行した。翌2005年、初めて赤字を計上した。燃料となるA重油の高騰が原因だった。この年、市船舶局は過去の実績から1Lあたり37円で予算を組んでいた。しかし、2005年中に51円に値上がりした。

 その後も予想外の値上げが相次ぎ、2008年には74.5円で予算を組んだが、同年8月には114円に値上がりし、急きょ予算の修正を余儀なくされた。

 原油高騰によるコスト増に対し、鹿児島市は生活にとって重要な航路であることを理由に、運賃据え置きと経費削減を徹底。2005年には、船内照明の削減や夜間のイルミネーションの21時消灯などでコスト削減を図った。

 同年、燃料を節約するために航路も見直された。それまでフェリーは、観光客が船上から桜島を長く眺められるように、また朝夕のラッシュ時に10分間隔で運航するほかのフェリーや漁船との衝突を避けるために、三角形に近い迂回ルートを選んでいた。これを直線ルートに変更することで、往復9.6kmが6.8kmに短縮された。さらに、安全性を確保しながら速度を落とし、航行時間を同じにすることで、大幅な燃料節減が達成された。

 また、これまで無料だった桜島ターミナル前の駐車場を有料化するなど、コスト増を運賃に反映させないためのさまざまな施策も実施した。その結果、2006年以降は再び黒字を確保している。

 こうした営業努力の結果、桜島フェリーは1994年以来、長きにわたって大人片道運賃150円を維持してきた。しかし、燃料費の高騰や消費税増税のなか、鹿児島市はやむを得ない事情として運賃の10円値上げを決定。その結果、2014年4月から大人片道160円に改定された。

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