鹿児島県「桜島フェリー」大幅運賃値上げに見る、地方生活路線の苦難 今後の活路はどこにあるのか?
高速道路整備の影響

当時、鹿児島市はこの10円値上げを赤字回避のために必要な措置と捉えていた。しかし、翌2015年からフェリーの収支は再び赤字となり、現在に至っている。赤字の主な原因は、利用者数の大幅な減少である。実際の利用者数と利用車両数は表のとおり。かつての年間利用者数500万人は、今や見る影もないことがよくわかる。
利用者数激減の理由は何か。船舶局に話を聞いたところ、最も大きな要因は2014年からの高速道路の整備だという。
「2014年以降、大隅半島から鹿児島市内へはフェリーを使わずに高速道路でアクセスできるようになりました。それに加え、人口減少が進む大隅半島では利用者が減少しています。特に車両の利用が減っているのは痛いですね」
鹿児島県の大隅半島では、2014年12月に国土交通省が建設した東九州自動車道の曽於弥五郎インターチェンジ(IC)~鹿屋串良ジャンクション(JCT)と、県が整備した大隅縦貫道の鹿屋串良JCT~笠之原ICが開通した。
その後、2021年には都城志布志道路の有明東IC~志布志IC、東九州自動車道の志布志IC~鹿屋串良JCTがそれぞれ開通している。地図を見ると、錦江湾を大きく迂回する高速道路よりもフェリーの方がアクセスしやすいように見える。しかし実際には、フェリー乗り場にアクセスするためには一般道を走らなければならないため、高速道路を選ぶ人の方が多いという。
さらに、地域の人口減少も利用者が増えなくなった大きな理由だ。鹿児島県のデータによると、4市5町で構成される大隅地域の2015年の人口は約23万8000人だったが、2020年には約22万4000人に減少した。減少率は約6%で、県全体の3.6%を大きく上回っている。今後も人口減少は続き、2030年には約19万5000人、つまり20万人を下回ると予測されているのだ。