大阪「金剛バス」全路線廃止は誰の責任だ? 体力ないバス会社か、それとも無策な政府か 地方を蝕む「運転士不足」という圧倒的リアリティ
自動運転や外国人運転士に期待

日本はかつてない急ペースで少子高齢化が進行し、バス運転士だけでなく、建設作業員、介護士、ホテル従業員など多くの職種で人手不足が慢性化している。バス会社の多くはコロナ禍で深刻な打撃を受け、運転士の待遇改善に限界がある。従来の手法で運転士を確保するのはもはや難しい。
業界が期待するのは自動運転の社会実装だ。福井県永平寺町では5月、国内で初めて運転士がいないレベル4の自動運転移動サービスがスタートした。京福電鉄の永平寺線跡を遊歩道に整備した「永平寺参ロード」を休日限定で13往復運航している。
しかし、一般車両が侵入しない2kmの遊歩道を10分かけて走るノロノロ運転。永平寺町総合政策課は
「運行は順調」
というが、レベル4の自動運転で人も車も多い一般道路を路線バスが走るとなると、もう少し時間がかかりそうだ。
大都市圏では連節バスに期待する動きがある。横浜市では西区と中区にまたがるみなとみらい地区で市交通局が連節バスを走らせているが、2024年度から神奈川中央交通が戸塚区、東急バスが青葉区で運行を始める計画だ。
連節バスは通常の路線バスの約2倍の乗客を運べる。神奈川中央交通と東急バスで計12台が導入される予定。横浜市都市交通課は
「運行本数を抑えることで運転士不足の影響を緩和できる」
とみている。
国交省と出入国在留管理庁は外国人在留資格の特定技能に自動車運送業を追加する方向で協議している。バス運転士は日本語で行われる試験に合格して大型二種免許を取得しなければならないが、言葉の壁を乗り越えて外国人を働きやすくするためだ。
だが、これらの対策をすべて実施しても、路線が維持できる保証はない。少子高齢化で人手不足が起きることはかなり前から予測されていたが、政府は先手を取った対策に乗り出さず、いたずらに事態を深刻化させた。そのつけが今、バス会社や利用者に回ろうとしている。