大阪「金剛バス」全路線廃止は誰の責任だ? 体力ないバス会社か、それとも無策な政府か 地方を蝕む「運転士不足」という圧倒的リアリティ

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路線バスの運転士不足が深刻さを増す一方で、三大都市圏の大阪府でバス事業を廃止する会社が出てきた。このままでは全国の路線バス網が寸断されそうだ。

富田林市の金剛バスが12月で廃止に

大阪府富田林市の近鉄富田林駅南口にやってきた金剛バス(画像:高田泰)
大阪府富田林市の近鉄富田林駅南口にやってきた金剛バス(画像:高田泰)

 路線バスの運転士不足が深刻さを増す一方で、三大都市圏の大阪府でバス事業を廃止する会社が出てきた。このままでは全国の路線バス網が寸断されそうだ。

 駅前ロータリーに緑色の路線バスが次々に入ってくる。バスを降りた乗客は駅へ向かい、大阪市行きの電車に乗り込んでいく。大阪府富田林市の近鉄長野線富田林駅。富田林市などの住民にとってバスと電車を乗り継ぐ交通結節点だが、異変が起きた。富田林市と河南町、太子町、千早赤阪村を走る金剛バスが運転士不足により12月20日で廃止されることだ。

 金剛バスは富田林駅などを拠点に運休中の1路線を含めた15路線を持つが、富田林市東部から河南町、太子町にかけては金剛バスしか路線バスがない。

「バスが廃止されたら、通勤できない」

富田林市美山台から大阪市阿倍野区へ通う店員の女性は困惑した表情を見せた。

 金剛バスを運行する金剛自動車(大阪府富田林市)は運転士の退職が続いた。全路線の運行には運転士約30人が必要なのに、自社の17人と他社からの派遣3人で運行している。4市町村は補助金交付を申し出て運行継続を求めたが、金剛自動車は

「補助金をもらっても運転士が集まらない」

として廃止を決めた。

 4市町村は富田林市西部に路線を持つ近鉄バスと南海バスに運行を求め、国土交通省近畿運輸局や大阪府も参加する法定協議会で10月から対応を協議する。近鉄バス、南海バスとも運行に前向きだが、運転士不足に苦しんでいることに変わりない。

 今後は4市町村が事業主体となってバス会社と運行契約を結ぶコミュニティーバス方式が有力だ。ただ、便数や路線の削減は避けられそうにない。富田林市道路交通課は

「公共交通の空白地域が生まれるのは避けたい」

太子町秘書政策課は

「できるだけ便数を残せる方法はないものか」

と対応に苦慮している。

 4市町村は大阪都市圏の南東端に位置する三大都市圏の一角。運転士不足は地方で大問題になっているが、その影響が急拡大し、三大都市圏にも押し寄せてきた格好だ。

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