大阪「金剛バス」全路線廃止は誰の責任だ? 体力ないバス会社か、それとも無策な政府か 地方を蝕む「運転士不足」という圧倒的リアリティ

キーワード :
,
路線バスの運転士不足が深刻さを増す一方で、三大都市圏の大阪府でバス事業を廃止する会社が出てきた。このままでは全国の路線バス網が寸断されそうだ。

2030年には全国で3万6000人が不足

十勝バス(画像:写真AC)
十勝バス(画像:写真AC)

 地方は既に路線廃止と減便のラッシュ状態に陥っている。高知県高知市のとさでん交通は10月から路線バスの運行本数を平日76便削減する。北海道帯広市を中心に走る十勝バスは8月から6路線16便を廃止し、12路線37便を減便した。

 島根県では、一畑バスが8月、松江市と雲南市の5路線で平日20便を削減したのをはじめ、松江市交通局が市営バス4路線で平日16便の減便を10月から実施する。長崎県の島原鉄道は有家-小浜-諫早線の直通バスを10月から廃止する。

 赤字が続く石川県金沢市などの北陸鉄道石川線は、沿線の地方自治体が将来像を検討したが、運転士不足でバス転換を選択肢に入れられずに鉄道の存続を決めた。金沢市交通政策課は

「バス転換すれば他の路線に影響が出る」

と説明している。

 全国のバス会社は大型二種免許の取得支援など運転士確保に躍起になっている。しかし、運転士は集まらない。とさでん交通はバス路線維持に20人以上の新規雇用が必要なのに、2023年度に採用できたのはわずかひとり。バス会社間の運転士引き抜き合戦や残業規制が適用される“2024年問題”対応で先行するトラック業界への転職も目立ってきた。

 各社は定年延長や再雇用でしのいでいるものの、厚生労働省によると、運転士の平均年齢は2021年で53歳に達し、今後も大量退職が続く見通し。日本バス協会は現在の路線が維持された場合、2030年で全国約3万6000人の運転士が不足すると試算し、

「運転士不足がさらに深刻化する」

と述べた。

全てのコメントを見る