タクシー業界は本当に「既得権益」なのか? ライドシェア議論活発化&神奈川版構想登場で改めて問う

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一般ドライバーが自家用車を使って有料で客を運ぶ「ライドシェア」。神奈川県の黒岩祐治知事が県内で「神奈川版ライドシェア」を実施する構想を示し、さらなる注目を集めている。

ライドシェア普及国の特徴

タクシー(画像:写真AC)
タクシー(画像:写真AC)

 この反省をふまえ、都市圏では現在、「特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法(改正タクシー特措法)」で指定地域・準指定地域が定められ、タクシーの増車は制限されている。

 この法律では過剰な競争を抑制するとともに、タクシードライバーになるために法令・地理試験の合格を課している。つまり、競争を抑制しながら一定水準以上のスキルを担保しているのである。対して、前述の黒岩知事の提案は、美名を装ってはいるが、実際には、安全が保証されず不安定雇用を余儀なくされているドライバーによって不足分を賄うと述べているにすぎない。

 ライドシェアは世界的に普及しているとされる。しかし、共通して語られる利点は目的地を明確に指定し、金額の概算がわかることだ。つまり、ドライバーの質が悪かったり、ぼったくりやチップの要求が常態化していたりする国で普及しているサービスといえる。

 例えば、2012(平成24)年にサービスを開始した中国のライドシェアサービス「滴滴出行」は、2016年にはウーバーの中国事業を買収するまでに成長した。背景にあったのは、従来のタクシーの

「質の悪さ」

だ。筆者(一色祐三、タクシーライター)も体験したが、行列してタクシーを待っていると、多くのタクシーが相場の数倍の値段をふっかけてくる。そして警察官がやってきては、散っていきまた戻ってくるのを繰り返していた。

 そうした国であれば、ライドシェアが普及するのは当たり前である。もっとも、ライドシェアでは殺人や性的暴行事件が発生しており、滴滴出行自体も、2021年7月に個人情報の収集・使用に関し重大な違法行為があったとして、アプリストアから削除されている(2023年1月に制限解除)。

 こうした国々に比べれば、日本はタクシーが極めて信頼できるため、低質なサービスを導入する必然性はない。

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