タクシー業界は本当に「既得権益」なのか? ライドシェア議論活発化&神奈川版構想登場で改めて問う
繰り返される「既得権益」言説

もっとも党内でも反対論は根強い。8月29日に自民党本部で開催されたタクシー・ハイヤー議員連盟(会長・渡辺博道復興相)の会合では、安全性の確保や事故の際の補償に対する懸念の声が集中している。
黒岩知事は、タクシー会社の管理下でライドシェアを実施して懸念の払底を狙っていると見られるが、実際にそうした運用が可能かどうかは不明瞭だ。
さて、日本でライドシェアの導入が検討される頃から繰り替えされているのが、タクシー業界の
「既得権益」
を打破するという言説だ。タクシー業界の規制緩和への言及は、三公社(日本専売公社、日本電信電話公社、日本国有鉄道)が解体された1980年代から早くも始まっている。
1989(平成元)年、公正取引委員会の「政府規制等と競争政策に関する研究会」は、規制緩和を是として関係省庁にさまざまな提言を行っている。このとき、交通関係では次のものが挙げられた。
・トラックや倉庫業の参入(開業)、運賃・料金の規制を緩和し、価格やサービス面の競争が起きるようにする
・同じ地域は同じ料金という硬直的なタクシー料金制を崩し、上限だけを規制する最高運賃制に変える
規制を緩和すれば、市場原理を通じて消費者が自己責任に基づいて自由な選択をできるようになる。そして、企業間の競争も活発になり、経済は活性化する――と、当時は考えられていた。
とりわけ1970年代以降、アメリカのカーター、レーガン政権、イギリスのサッチャー政権が規制緩和を実施したことで、経済成長が見られたという言説が後押しをした。いうまでもなく、弱者切り捨ての部分は無視された。
こうして1990年代になると、加速した規制緩和の波はさまざまな規制に
「既得権益」
というレッテルを貼っていった。とりわけ、2001(平成13)年に成立した小泉政権はそれを加速させた。