存続か廃止か? 芸備線「赤字区間」の巨大ジレンマ、JR西・自治体の板挟みに遭う国交省の終わりなき苦悩とは
存廃協議拒否され、JR西日本が決断
岡山県と広島県を走るJR芸備線の存廃をめぐり、JR西日本が国へ新制度の再構築協議会設置を要請する方針を示した。中国山地を走る鉄路の行方はどうなるのだろうか。
【無料セミナー】「自動車DXサミット vol.3」 三菱ふそう KTC マツダ登壇 Amazonギフトカードプレゼント〈PR〉
「再構築協議会設置を要請したいという話をさせていただいた。スムーズに議論を進めたい」
芸備線をテーマに岡山市で8月上旬に開かれたJR西日本に対する岡山、広島両県のヒアリング。非公開の会合終了後、報道陣の前に現れたJR西日本地域共生部の須々木淳次長は淡々と語った。JR各社が再構築協議会設置の意向を表明したのはこれが初めてだ。
芸備線は岡山県新見市の備中神代(こうじろ)駅から中国山地を通って広島市の広島駅へ向かう159.1km。このうち、備中神代駅から広島県庄原市の備後庄原駅間68.5kmは、輸送密度(1km当たりの1日平均利用者数)がコロナ禍前の2019年度でわずか48人まで落ち込み、全国有数の過疎区間になっている。
2017年度から3年平均の年間営業損失は
・備中神代~東城(庄原市)間:2.2億円
・東城~備後落合(同)間:2.8億円
・備後落合~備後庄原間:3.1億円
区間全体で8億円以上に上り、数字に廃線やむなしとも受け取れる厳しい状況が浮かぶ。
JR西日本と沿線の地方自治体は、備中神代~備後庄原間の利用促進策を話し合ってきたが、存廃も含めた論議に踏み込みたいJR西日本の提案を自治体側が拒否し、進展が見られない。業を煮やしたJR西日本が10月施行の改正地域公共交通活性化再生法で新設される再構築協議会設置へ動いた格好だ。
再構築協議会は大量輸送という鉄道の特性が発揮されていない区間を対象に、沿線自治体または鉄道事業者の要請に基づいて国が設置し、存廃も含めて区間のあり方を議論する。JR西日本は改正法施行後、速やかに国土交通省へ要請するとしている。
JR西日本の姿勢に対し、岡山県県民生活交通課、広島県地域政策局とも
「再構築協議会が開かれる場合、国から参加要請がある。その際に両県と沿線の新見、庄原両市で対応を検討したい」
と努めて冷静な反応を示した。