存続か廃止か? 芸備線「赤字区間」の巨大ジレンマ、JR西・自治体の板挟みに遭う国交省の終わりなき苦悩とは
岡山県と広島県を走るJR芸備線の存廃をめぐり、JR西日本が国へ新制度の再構築協議会設置を要請する方針を示した。中国山地を走る鉄路の行方はどうなるのだろうか。
難しい選択迫られる国土交通省

JR西日本は、再構築協議会で芸備線を乗客が激減している路線全体を再編する突破口と位置づけ、輸送密度や営業損失など数字を出して廃線か、自治体が施設を保有し、鉄道事業者が運行に専念する上下分離方式導入など芸備線運行への参画を沿線自治体に迫ると見られる。
これに対し、自治体側はこれまで、存廃議論に入ることを拒む作戦を取ってきた。再構築協議会に移行すればいや応なく議論に踏み込まざるを得ないが、上下分離方式の負担額は億単位。人口約2万7000人の新見市や約3万2000人の庄原市には重すぎる。
その一方で、新見市が芸備線沿線の哲西(てっせい)地区で乗り合いタクシーを導入し、駅へ向かう市営バスの大野部線、矢神線を増便したところ、2022年度の鉄道やバスなど公共交通利用者が前年度の
「1.6倍」
に増えたという前向きな結果が出ている。こうした地域の努力は国に訴えていく方針だが、どのようにして廃線の危機を乗り越えるかは手の内を見せていない。
斎藤鉄夫国土交通相は8月上旬の記者会見で存続も廃止も前提としない中立の立場で会議に臨み、鉄道事業者や自治体任せにせずに解決を図る考えを明らかにした。しかし、存続か廃止かの二者択一となれば、双方が納得する結論を出すのは容易でない。
しかも、人口減少と国、自治体の財政難が今後さらに深刻化するなか、すべての鉄道ネットワークを維持できるかどうかも疑問符がつく。国交省は再構築協議会で難しい選択を迫られそうだ。