存続か廃止か? 芸備線「赤字区間」の巨大ジレンマ、JR西・自治体の板挟みに遭う国交省の終わりなき苦悩とは
検討会議は静かな戦いの場に
芸備線の備中神代~備後庄原間は2021年、JR西日本からの申し入れで利用促進に向けた検討会議が設置された。2023年2月からはJR西日本に対する岡山、広島両県主催のヒアリングも行われ、意見交換が続いている。しかし、両者の意見の隔たりは深まる一方だ。
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JR西日本は、2022年4月に単独で維持困難な全国17路線30区間を公表した直後の5月、芸備線の存廃を含めた協議入りを提案した。しかも、提案が拒否されると、自治体側が利用促進に向けた施策を続けているにもかかわらず、芸備線の現状を
「鉄道が大量輸送機関としての特性を発揮できず、地域の役に立っていない」
と切り捨てた。
この区間の列車は新見市の新見駅を起点に運行しているが、新見駅の1日運行本数は5~6本と、普段使いできる数ではない。当然、利用促進に限界があるはずなのに、その点に対する配慮も自治体側は感じられなかったという。
JR西日本は2004(平成16)年、政府が保有していた株式がすべて売却され、完全民営化された。その際、国土交通省から路線の適切な維持や利用者の利便性を確保した駅施設の整備などを求められている。
しかし、芸備線の協議で見せた姿勢は、公共交通機関としての立場より
「民間企業としての利益」
を優先し、廃止に向けて準備万端整えたうえで通告してきたように自治体側の目に映った。これでは路線維持を前提に協議に臨む自治体と意見が相いれるはずがない。
やがて検討会議は静かな戦いの場に変わり、広島県の杉山亮一地域政策局長が
「芸備線のあり方について議論する場所ではない」
とJR西日本をけん制する場面も見られた。会議は何も決まらないまま、時間だけが過ぎている。