「エンジン音」にこだわるのは時代遅れの“ノスタルジー”か、はたまた新たな価値創出か? EV隆盛時代に考える
自動車の車外騒音

現在、日本国内で新規登録されている自動車の車外騒音は、フェーズ2と呼ばれている規制で運用されている。この規制は乗用か貨物用か、さらにはエンジン出力と車両重量の比によって規制値(dB/デシベル)は細分化されている。
その具体的な数値はR51-3と呼ばれている加速走行騒音規制で、一般的な乗用車で70dBから74dBというもの。この規制数値は、2024年7月に導入が予定されているフェーズ3では68dBから72dBへと強化される。
数値的な変化はわずかと思うかもしれないが、1dBの変化は実際に耳に届く音圧的には1.12倍の違いがある。2dBであれば1.25倍。3dBであれば1.41倍。6dBでは2倍となる。
ある物体が発生する音が2倍になったとする。それがピーク時の音であればとても容認できるものではない。dBとは数値の小ささ以上に実際の音圧変化は大きいということである。
18年前の興味深いユーザーの声

さて、クルマにおける車外騒音だが、筆者(矢吹明紀、フリーランスモータージャーナリスト)は過去に興味深い一般ユーザーの声を耳にしたことがある。
ちょうど2代目プリウスが普及し始めた頃であるから2005(平成17)年頃のことである。その人は、とある商店街の路地で、後方から低速で近づいてきた電気自動車(EV)モードで走行中のプリウスに気付かずびっくりさせられたというものだった。
こうした状況は、プラグインハイブリッド車(PHEV)とEVの普及が進んでいる昨今は、さらに増えているのではないかと推測できる。もちろん、市街地や住宅街などでは車外騒音が低いに越したことはない。これはいうまでもないことである。
しかしその一方で、歩行者や自転車などへの存在アピールという意味では、無音もしくは低騒音であることが必ずしもよいわけではない。要するにクルマとは
「相応の走行音」
を発していてこそ、その存在を歩行者に知らせることができるという紛れもない事実である。
ホーンで警告するという方法もあるが、これはあくまで最終警告手段である。日常的な「クルマが近くに来ていますから注意してくださいね」的な控え目アピールにはふさわしくない。