「宇都宮LRT」は本当に成功するのか? 8月開業も地元紙が内部文書スクープ、概算事業費172億円増加で 乗客試算も甘すぎの現実も

キーワード :
, ,
宇都宮LRTが8月26日、開業する。1948年以来となる新規路面電車だけに注目を集めているが、地元新聞による内部文書のスクープなど、必ずしも順調とはいえない幕開けだ。

楽観的過ぎた乗客試算

宇都宮LRT(画像:写真AC)
宇都宮LRT(画像:写真AC)

 このとき問題となったのは、宇都宮市の「乗客の試算」である。宇都宮市では当初、

・1日の需要推計:4万4900人
・運賃:平均150円
・1年の収入:約21億円

としていた。人件費や維持費を除いて約3億円が残る計算である。これについて、県内バス最大手の関東自動車が

「需要予測が楽観的過ぎる」

と市議会に意見書を提出した、それほど甘い見積もりだった。なにしろ、同社の乗客は栃木県内全体でも1日あたり約4万2000人だったため、同社から見ればLRTの乗客数は容易に信じた難かったのだ。

 それでも、宇都宮LRTが実現にこぎつけたのは、計画を継続するなかで、次のような面で市民の理解を得られたからだ。

・工業団地を抱え通勤需要が見込める
・市東部の慢性的な渋滞が存在する
・高齢化が深刻な問題として認識されている

 とりわけ、市が総合計画のなかで

「車の運転ができなくなった高齢者も、障害のある人も、免許のない学生も、乗り継いでいけばどこまでも自分の意志で自由に移動できるまち」

というイメージを明確にし、LRTだけでなくバスや地域内交通などを組み合わせたネットワーク型コンパクトシティを提示できたためだった。

 構想だけで終わったほかの都市でも「まちづくり」を提示しているが、宇都宮市ほど明快ではない。なにより、イメージを具体化させる以前に頓挫している。

全てのコメントを見る