「宇都宮LRT」は本当に成功するのか? 8月開業も地元紙が内部文書スクープ、概算事業費172億円増加で 乗客試算も甘すぎの現実も
宇都宮LRTが8月26日、開業する。1948年以来となる新規路面電車だけに注目を集めているが、地元新聞による内部文書のスクープなど、必ずしも順調とはいえない幕開けだ。
LRT反対を掲げる声も

ところが、この事実は数年にわたって公表されなかった。
宇都宮市の説明では、その後工事が進み「精度の高い精査」ができるようになり、2023年1月に佐藤栄一市長に報告。これを受けて約191億円の増額になることを発表したという。
問題は、公表前の2020年11月に宇都宮市長選が実施されていることだ。すなわち「タイミングを計り」その公表を遅らせたのではないかと疑われているのだ。
そんな宇都宮LRTだが、次世代の交通機関として成否が注目される一方、地元ではいまだに反対論が根強い。2016年の市長選では、現職の佐藤市長に対して、LRT反対を掲げる市民団体などから支持を受けた新人の金子達氏が立候補、
「得票差約6200票」
で佐藤市長が辛勝するところまで追い詰められている。2022年の市長選は、反対派の候補者選定が難行したこともあり、佐藤市長が5万票以上の差を付けて勝利しているが、もしも事前に事業費増額が公表されていたら、どうなっていたかはわからない。
そもそも、宇都宮LRTは本当に役立つのだろうか。
なぜなら、全国各地で導入提案がありながら、現状は2006(平成18)年にJR富山港線を再生する形で生まれた富山県富山市の「富山ライトレール」のみである。新設は宇都宮市が初の事例となる。富山LRTの開業を前に、国ではLRT導入の補助金制度を開始している。これを受けて、全国ではLRT導入の機運が高まった。なお、2005年以降
・静岡県浜松市
・新潟県新潟市
・石川県金沢市
・大阪府堺市
・熊本県熊本市
・長崎県長崎市
の都市で、なんらかの形で導入が検討されている。しかし、宇都宮市を除いて、建設に着手する自治体は現れていない。