「LRT脱線事故」が起きても、宇都宮市民が全然批判的じゃない理由
11月19日に発生した「芳賀・宇都宮LRT」の脱線事故を振り返るとともに、宇都宮市の脱炭素に向けた取り組みを紹介する。
午前0時半に事故発生
栃木県の宇都宮市と芳賀町が整備する次世代型路面電車「芳賀・宇都宮LRT」が11月19日、脱線事故を起こした。この事故は多く報道され、関係者を不安に陥れた。
その一方、どのような状況で発生した事故なのかは耳目を集めるに至っていない。本記事では事故当時の状況と対応策を改めて解説するとともに、2023年8月の開業に向けた動向を記していきたい。
事故は、JR宇都宮駅東口前の広場で発生した。時刻は午前0時半で、深夜にも拘わらず係員のほか数十人の見物人がいた。
宇都宮市の発表によると、事故は上り線で、車両の進路を変える分岐器を使った入線試験を行っている最中に発生した。右カーブの外側に広がる形で、3両編成の先頭車両の四輪と中間車両の後方二輪が脱線して10m進行。途中、車止めのポールをなぎ倒し、変圧器に接触した後歩道に乗り上げ、弾みでパンタグラフを破損した。
このときの入線試験は、パターンを変えてさまざまな入線を行い、異常を確認するものだった。脱線は車両が下り線を逆走して分岐器を通過し、上り線に入るという緊急事態を想定した入線の際に発生した。
市の発表によると、時速5km以下のときには異常がなかったが、時速13kmで入線したところ脱線が発生したとしている。このため、事故は
「ミスではなく複数の要因が重なっている」
と推定されており、11月25日からは、車両に振動加速計を搭載し、速度と横振れの関係を解析する調査などを実施している。事故原因への対策は、今後の調査結果を待つことになるが、一方で脱線した車両が歩道に乗り上げてしまうことが明らかになったため、こちらも早急な対策が進んでいる。