「宇都宮LRT」は本当に成功するのか? 8月開業も地元紙が内部文書スクープ、概算事業費172億円増加で 乗客試算も甘すぎの現実も

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宇都宮LRTが8月26日、開業する。1948年以来となる新規路面電車だけに注目を集めているが、地元新聞による内部文書のスクープなど、必ずしも順調とはいえない幕開けだ。

着手する自治体が現れないワケ

宇都宮LRT(画像:写真AC)
宇都宮LRT(画像:写真AC)

 なぜ、建設に着手する自治体は現れていないのか――。

 例えば、大阪府堺市では早い段階からLRTの新設構想が持ち上がり、2008(平成20)年の『堺市の交通ビジョン』で公表されている。堺市は南北に

・南海電気鉄道南海本線
・阪堺電気軌道阪堺線
・南海電気鉄道高野線

の3路線がありながら、東西の交通が弱い問題があった。そこで、東西にLRTを新設して利便性を高めようというのが堺市の構想であった。

 堺市で構想が頓挫したのは、具体的な街づくり案を示すことができず、市民からの反対の声が根強かったためだ。堺市では当初、街の活性化につながるとして導入に前向きな意見を持つ市民が多かった。ところが、計画は進んだものの、具体的な街づくり案は示されず、次第に財源を投入してまで建設する価値が疑問視されるようになったという。

 ほかの都市でも事情はほぼ同じだ。いずれも構想段階で頓挫している理由は

・事業費に見合う価値があるのか
・LRTを軸にどう街づくりをしていくのか

この基本的な部分を提示できなかったものばかりである。宇都宮市ですら建設にこぎつけるまでは何度も「頓挫した」と報じられるほど、実現は難行している。

もともとは「渋滞対策」

宇都宮LRTの内部(画像:宇都宮ライトレール)
宇都宮LRTの内部(画像:宇都宮ライトレール)

 もともと、宇都宮LRTは1990年代に当時の渡辺文雄県知事が、

「渋滞対策」

として提案したものだった。

 その後、県と市が調査研究を続け、福田富一県知事が宇都宮市長時代に公約として掲げた。これを2004年に初当選した佐藤市長が受け継ぎ、ようやく本格化したという流れである。

 しかし、当初から市民の反対論は根強かった。そのため、2008年の市長選では導入推進を掲げていた佐藤市長は

「導入は白紙」

に方針を切り替えて再選している。

 さらに2009年には、推進派を後押ししていた地元の栃木1区の船田元衆院議員(自民)が、総選挙で敗れて落選。ついに、市議会で自民党会派からまで

「一時先送り」

を求める要望書が提出されるまでに後退した。

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