日産サクラに「オタク要素」はいらない! 国内EVシェア“4割超え”で見えてきた、「普通っぽさ」という躍進への萌芽

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日産自動車が開発した軽自動車規格のBEVである「サクラ」が発売開始から1年が過ぎた。その間の累計販売台数は、2023年3月19日の時点で約4万2000台に上っている。

航続距離は理論値の「75%程度」か

サクラ(画像:日産自動車)
サクラ(画像:日産自動車)

 さて、サクラのBEVとしての性能である。サクラのバッテリー容量は20kWhしかないため、最大航続距離は理論値で180kmといわれている。ただし実際の走行可能距離は十分な余裕を見た上で

「120~150km」

と考えた方がよい。

 一方、バッテリー容量が小さいだけに充電時間も少なくて済むというメリットもある。

・日々の買い物やおつかい程度
・1日の走行距離は最長でも100km以下

といったライトユーザーであれば、現状のスペックで何の不足もない。そうした使い勝手と価格の安さ。その上で安全装備や快適装備に何の不足もない。ある意味、“売れて当然”というべき1台だった。

「コストダウン」という海外戦略

2023年、主要メーカーの電気自動車(BEV/PHV/FCV)販売台数推移(画像:マークラインズ)
2023年、主要メーカーの電気自動車(BEV/PHV/FCV)販売台数推移(画像:マークラインズ)

 こうなると、サクラにはもっと可能性があるようにも思える。

 日本の軽自動車はあくまで

「日本国内需要を想定した商品」

であるというのは、まぎれもない事実である。

 しかし実際にはこれまでも東南アジアや欧州の一部などでも多くの人気を集めている。そうした市場では価格が安いことが極めて重要ではあるが、今後量産を重ね価格の引き下げを行うことができれば新たな市場を開拓することも不可能ではない。

 新興国でのBEVは中国製の格安車が一定のシェアを確保しているが、そのクオリティーは必ずしも高くはない。サクラが

「さらなるコストダウン」

を実現できれば、日本車ならではのクオリティーの高さを評価されシェアを拡大することもできるだろう。新興国の自動車メーカーへの製造ライセンス供与もまた有望な分野だ。

目指すべき航続距離「最低200km」

日産自動車の本社ビル(画像:写真AC)
日産自動車の本社ビル(画像:写真AC)

 一方、日本国内市場においての今後だが、バッテリー自体やインバーターの効率を上げるなどして航続距離は安定して

「最低200km」

は走行できるレベルにまで高めると、その商品価値は一層高まるだろう。実際にそのレベルまでは走行しなくても、“短いよりは長い方がよい”と考えるのは消費者の常である。

 充電は、一戸建て住宅やマンションなどの集合住宅にも設置できる「普通充電器」の基本性能と使い勝手を向上させることも重要である。

 自宅の近所に手軽に利用できる急速充電ステーションがあれば問題ないが、現時点ではなかなかそうはいかない。充電待ちの時間も含めて、意外と

「普段使い」

でストレスになるのが、充電に要する手間と時間である。

 この部分に掛かる時間をより短縮できれば、内燃機関の軽自動車と扱いはほぼ変わらなくなる。仮に半日買い物等で走っても、自宅の充電設備で一晩掛からずにフル充電できればBEVであるという特殊性は忘れて普段使いが可能となるだろう。

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