「EV = 日本で普及しない」といまだに言い続ける人たちへ あなたたちは基幹産業を弱体化させるつもりなのか? データで徹底証明する
なぜ世界がEVを推し進めるのか
2022年7月、世界のEV(バッテリー式電気自動車〈BEV〉、プラグインハイブリッド車〈PHEV〉の両方)のシェアは2021年から約2倍となる14%に達し、このうち3分の2以上となる10%をBEVが占めている。
このように世界が足並みをそろえてEVを推し進めるなか、一部のメディアやSNS上ではいまだに
「EVは製造で大量の二酸化炭素を排出し、火力発電が中心の日本では排出量の削減にならない――」
といった主張を目にすることも珍しくない。
環境性を議論するには、LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)と呼ばれる手法を使い「製造から廃棄まで」の総排出量を考える必要があるが、EVは搭載されている電池の製造過程において多くの二酸化炭素を排出するほか、火力発電を使うと排出量の削減にはならず、内燃機関車やハイブリッド車(HV)のほうが低排出という理論だ。
これは、主に内燃機関車の販売により利益を上げる既存自動車メーカーや化石燃料業界に多く見られる主張で、例えば、2019年にマツダと工学院大学が共同で「Estimation of CO2 Emissions of Internal Combustion Engine Vehicle and Battery Electric Vehicle Using LCA(LCAを用いた内燃機関車とバッテリー式電気自動車のCO2排出量推計)」(著者:Ryuji Kawamotoほか)の論文を通じて同様の主張を発表している。
本稿では改めてこれらの主張が正しいかどうかを検証し、なぜ世界が足並みをそろえてEVへの移行にかじを切っているのか、そして世界で予定されているEVを普及させるための動きについて解説する。
なお、環境性以外のEVの課題と対策は以下の記事でも解説しているので、もし今のEVに課題を感じているのなら、筆者(八重さくら、環境系VTuber)が当媒体で以前書いた記事「EVアンチをついに論破? もはや爆速普及が否定できない「8つの根拠」」(2022年6月5日配信)も併せて参照してほしい。
また、本記事では純粋に「環境性における事実を検証すること」が目的であり、内燃機関車のオーナーに対してEVの購入を促したり、EVと内燃機関車やHVに対して
「優劣をつけたりするものではない」
ことをあらかじめ申し伝える。