「EV = 走るコンピューター」が理解できない日本人! テスラ・中国勢がなぜ圧倒的躍進を遂げているのか、その根幹をまずは知るべきだ
中国の蓄電池の大量生産による産業化
4月18~27日に開催された上海モーターショー以来、日本の自動車業界には「上海ショック」が吹き荒れているという。日本の電気自動車(EV)の遅れに関して、批判的な論調を控えていた国内のメディアも、さすがに今回は日本の立ち遅れへの危機感を伝えるようになった(前編・中編・後編の中編)。前編は「上海モーターショーで全世界「EV転換」明らかに! ガラパゴス日本に迫る没落カウントダウン、マスコミ論調さえ大きく転換の辛らつ現実」(2023年5月14日配信)
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本稿では近年、EV化が急激に進展した要因として、中国躍進の秘密とイーロン・マスク率いるテスラとの関係について解説する。
近年のEV化の急激な進展では、中国による蓄電池の大量生産の要素が大きい。これは、太陽光発電の歴史を後追いしている。太陽光発電も、わずか20年前には高コストだったが、中国が2000年代中頃からに大量生産による産業化に参入してから急速にコストが下がり、世界中で普及する原動力になった。
中国は2010年以降、国策としてEV開発やリチウムイオン蓄電池の開発や生産を支援してきたことが実を結んでいる。特に、リン酸鉄リチウムイオン(LFP)正極の蓄電池については、今のところ中国が生産をほぼ独占している。
LFPは発火や爆発の危険性が低いために安全性が高い。資源豊富な鉄を用いるため、低コストで充放電効率が高いものの、
「充電密度の低さ」
が課題だった。しかし、中国の研究開発と生産拡大による技術学習効果によって、実用可能なLFPが大量生産されはじめ、今やEV市場の約3分の1を占め、なお性能向上と価格低下が進んでいる。
その結果、今や中国は世界のリチウム精製の約60%と過半を占め、EV向けのセル生産では56%を占めるに至った。