テスラ「一人勝ち」は単なる“BEV盲信”ではない! 大規模リコール発生も、改めて知るべき製品パフォーマンスという基本情報
モデル3に試乗した印象

テスラモデルSの発表から、約7年。その対抗馬であるポルシェ「タイカン」がリリースされる。モデルSより少しだけ全高が低いが、全長、全幅のサイズ感はほぼ一致。BEVの暴力的なトルクを見事にいなす足回りはさすが、ポルシェと思わせる仕上がりで、何より日本では1200万円台と、モデルSとほぼ同価格帯だ。
そのタイカン発表とほぼ同時期に、同じくホルツハウゼン氏デザインのモデル3が日本でもデリバリーされ始めた。手動となったドアハンドルなど、コストダウンは随所に見られる。その一方で、ミニマルかつシンプルに昇華されたエクステリアとインテリアには好感を持つ人が多いのではないか。
モデル3に試乗した印象では、低重心でしっかりとした乗り心地は相変わらず洗練されている。静粛かつ胸のすく加速がもたらす快適なドライビング、先進的なインフォメーションシステムなどは、時にモデルSに以上だ。マンションの立体駐車場にも収まるサイズながら、こちらも大人4人の乗車はもちろん、合わせるとSUV並みの561Lの荷室を前後に備えている。
本体価格は半額程度ながら、この完成度の高さは、モデルSが素晴らしい内容で先行デビューしたからこそである。数年にわたる実用面でのマイナス点をことごとくクリアした、先進的ながら極めてオーソドックスかつ上質なスポーツセダン。それが補助金も含めると日本では400万円台前半から購入可能なのだ。そして自動車税も最大限の非課税恩恵が受けられるのである。
EVに対する補助金は、米国では自国メーカーに限られるという。この点もテスラに優位に働くが、当初からハイパフォーマンスモデルをまずデビューさせ、そのエッセンスをオーソドックスなスポーツセダンであるモデル3に帰結させるゴールイメージを持っていたことがテスラ成功の最大の要因だ。
一見、王道の戦略ともいえるが、モデル3の生産現場に寝泊まりしたと報じられながらも、それを着実に成し遂げるイーロン・マスク氏の情熱と自動車開発のビジョンには感服せざるをえない。