テスラ「一人勝ち」は単なる“BEV盲信”ではない! 大規模リコール発生も、改めて知るべき製品パフォーマンスという基本情報
モデルSのパフォーマンス性

しかし、筆者(J.ハイド、マーケティングプランナー)はもうひとつの要素こそがテスラの成功の本当の鍵であったと考える。
それは本格的な量産車となったモデルSが
「ハイパフォーマンスカー」
だったことである。そしてそこから得られた教訓を次の本命、モデル3に着実に生かしたことが加わる。
モデルSのチーフデザイナーには北米マツダからフランツ・F・ホルツハウゼン氏を抜てき。デビューから10年たった今見ても、クルマ好きが受け入れるエクステリアデザインは美しい。
クルマに手を差し伸べると電動でせり出すドアハンドル、ドライブシャフトがなく大人4人がしっかり乗れる広い室内とタブレットによる空調などのインターフェース。加えて、椅子を倒さなくても前後で895Lとされるラゲッジスペースがダメ押しする。
モデルSを実際に間近に見て触れてみると、真っ先にクルマとしての完成度と、けれん味たっぷり、しかし実用的なギミックの数々に驚くだろう。
ドライバーズシートに座り、街中に繰り出せば、静粛性としっかりとしたボデイ剛性、そして何より強力なトルクにより、あっという間に法定速度に達する加速力にさらに驚愕(きょうがく)する。しかも音が小さいために五感が加速に追いつかない。結果、リア駆動のモデルSの加速は、やや血が引けるようにも感じられる。
この加速感はリアエンジン、同じくリア駆動のポルシェ911ターボなどに匹敵するが、新幹線のような音の少なさは異様だ。同じような異次元の加速感はトヨタ「RAV4 PHV」でも得られ、それゆえに同車はトヨタスポーツタイプ多目的車(SUV)のなかでもかなりの人気車種となっている。
この静粛性とデザインに優れ、家族の使用にも耐える居住性に広大なラゲッジ、未来的なインターフェース、そして何よりクリーンなBEVでポルシェ並みにパワフルなクルマが1200万から手にはいるのだ。同価格帯のパフォーマンスカーを多数ラインアップするドイツメーカーにとって、かなりのインパクトだったのは想像に難くない。