テスラ「一人勝ち」は単なる“BEV盲信”ではない! 大規模リコール発生も、改めて知るべき製品パフォーマンスという基本情報
ユニークな販売スタイル

まずは、そのユニークな販売スタイルに注目しよう。
自動車販売には、肝心のクルマ以外に
・販売網の整備
・点検サービスなどの充実
というインフラ構築が必要とされてきた。日本では特にその傾向が強く、海外でも販売店は独自の力を持っているため、メーカーはイメージリーダーたるフラッグシップ店を各地に設ける形が多い。
ところがテスラはそういった店舗は最小限で、日本でも8か所にすぎない(2023年5月時点)。都内では当初あった青山を閉店し、新宿に移転している。店舗が少ない代わりに、出張サービスなどが充実しているのもテスラの特徴だ。
内燃機関がないことでそれに対応する施設も少なく済み、全てのサービスや点検のやり方を変えることが可能になった。環境に配慮する点からか、店頭のカタログもなく、全てはウェブからのダウンロードが前提だ。これはコスト面でも効果的であり、それらを全世界で推進していることがテスラの成長を支える要因のひとつである。
イーロン・マスク氏は2015年の北米モーターショーで、トヨタのFCVのフューエル・セルをもじって、
「ばかげた(フール)・セルだ」
と酷評したと一部で報じられた。当時は大人げない発言と感じた人も多かったが、マスク氏には今日のような時代が見えていたからだと、今なら理解できるだろう。
実際、テスラは納車が本格化する以前の2013年、モデルS用の高速充電ステーション「スーパーチャージャー・ネットワーク」の全米展開の開始を発表。日本でもすでにテスラのステーションだけで69か所となっている。
加えて、さまざまなEV用充電ステーションの設置は通常出力のものを含め、今や1万7677拠点が設けられている(2022年8月時点。ゼンリン調べ)。今後予定されている集合住宅への補助金がより厚くなれば急速に拡大していくことだろう。全国でようやく168拠点(2023年5月時点。次世代自動車振興センター調べ)といわれる水素ステーションとの差はかなりのものといわざるを得ない。
このように、第1のポイントは、内燃機関だと必要になる
・整備にかかる設備資源
・従来の販売にかかる経費
を、充電ステーション普及にあてがったということである。そして、水素のようなこれからの技術・規格ではなく、汎用(はんよう)的な「電気」というインフラであることが、自社以外のさまざまなレベルでの充電拠点の増加に結びついたのだ。