「赤字路線維持」の約束はどこいった? JR四国・存廃論議入り打診の裏に見える、国の呆れた無策っぷり

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JR四国は管内3路線4線区の存廃論議入りを沿線に打診した。背景には経営安定基金で赤字路線を維持できなくなったのに、抜本的見直しを怠ってきた国の無策が見える。

金利低下でも抜本的対策に動かず

阿波海南駅に向かって阿南市内を走る牟岐線の列車(画像:高田泰)
阿波海南駅に向かって阿南市内を走る牟岐線の列車(画像:高田泰)

 こうした事態に陥ることは、国鉄分割民営化の時点で予想されていた。四国に政令指定都市がひとつもなく、ドル箱路線が存在しないからだ。このため、国はJR四国に2082億円の経営安定基金を与え、運用益で赤字を穴埋めすることにしていた。

 当初のもくろみでは、基金を債券や株式に投資し、JR発足前10年間の長期国債平均利回り7.3%で運用すれば、毎年152億円がJR四国に入るはずだった。1986(昭和61)年の衆議院国鉄改革特別委員会で、当時の橋本龍太郎運輸相は

「輸送実績を基に算定した結果。利回りで赤字路線を維持できる」

と胸を張った。

 だが、バブル経済が崩壊してもくろみは外れた。金利が低下し続けた結果、基金の運用益も減少する。国債などでは運用益が生じなくなり、リスクの高い株式運用に手を出して自主運用益がマイナスの年度も発生している。2019年度の運用益は68億円まで下がった。

 JR四国は開業以来、一度も鉄道事業で黒字になったことがなく、コロナ禍前には100億円以上の営業赤字を計上していた。この間、国は時限措置で財政支援をしてきたが、本格的にJR四国のあり方を見直さなかった。

 今回も、国が経営安定基金に代わる赤字路線維持のための方策を打ち出さず、単に

「線区別の輸送密度や収支だけで存廃を決める」

ことになれば、沿線自治体や住民の反発を招きかねない。地方が求めているのは抜本的な改革だ。

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