JR四国の運賃値上げ、住民の反応なぜ鈍い? 「路線残したい。でも乗らないよ」がホンネなのか

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なぜ、四国の人たちは赤字ローカル線に無関心なのだろうか。

赤字ローカル線を取り巻く現況

徳島市の富田川橋梁を渡る牟岐線の列車(画像:高田泰)
徳島市の富田川橋梁を渡る牟岐線の列車(画像:高田泰)

 JR四国の運賃値上げ申請に伴い、運輸審議会が予定していた公聴会が取り消された。公述の申し出がなかったためだ。なぜ四国の人たちは赤字ローカル線に無関心なのだろうか。

 通勤通学時間を過ぎた高知県大豊町のJR大杉駅に67歳の女性がやってきた。よそ行きのこざっぱりした服装をし、文庫本を読みながら特急列車の到着を待っている。半年に一度通う高知県高知市の病院へ向かう途中で、今は年金生活をしている。

 大杉駅がある土讃線は特急列車が1時間に1往復程度走っているものの、各駅停車の普通列車は1日5往復しかない。この女性は同じ大豊町の土佐岩原駅が最寄り駅だが、特急列車が停車しないため、知人に大杉駅まで車で送ってもらった。

 高速道路ができるまでは列車をよく利用していたが、今は車移動がほとんど。車のほうが早く着き、安上がりなのが理由だ。便数の減少も足を遠のかせたという。赤字ローカル線の見直しが始まろうとするなか、JR四国が運賃値上げを申請したことを伝えると、

「鉄道は残してほしいし、値上げは問題だと思うけど、乗る人がいないものね」

と語った。

公聴会の公述申し出ひとりもなく

土讃線(画像:写真AC)
土讃線(画像:写真AC)

 コロナ禍で鉄道やバスの経営が悪化し、全国で値上げ申請が相次いでいる。

 国土交通省から諮問を受けた運輸審議会が地元で公聴会を開いているが、住民から値上げに反発する声が出るのが一般的だ。7月に開かれた近畿日本鉄道の値上げに関する公聴会では、荒井正吾奈良県知事が出席し、疑問の声を上げて話題を集めた。

 ところが、運輸審議会が10月20日に香川県で開催を予定していた公聴会は、60人を超す傍聴希望者がある一方で、一般からの公述申し出がひとりもなく、開催が取り消された。国交省運輸審議会審理室は極めて珍しいケースとしている。

 国交省の有識者会議は7月、地方鉄道の見直しに関する提言で、利用者の少ない区間についてバス転換などを議論する仕組みの創設を打ち出した。これを受け、赤字ローカル線の将来に注目が集まっているはずにもかかわらず、四国ではなぜ声が上がらなかったのだろうか。