燃料電池車の本命は「大型トラック」 ホンダ・トヨタはなぜ他社との協業に注力するのか?
両社が大型トラックを選んだワケ

ホンダといすゞによる実証実験モデルは車両総重量25tの標準的なカーゴである。現時点で600km程度の航続距離が確保できているといわれている。トヨタの日野によるモデルも、発表の時点での目標航続距離は600kmだった。
大型トラックの場合、燃料切れは物流安定の意味で深刻なトラブルとなるため航続距離ギリギリでの運用は想定しにくい。実際の運用走行距離は500kmから550kmといったところだろう。
対してトヨタとケンワースが手掛けたトラクタの航続距離は300マイル(約486km)といわれている。これはあくまで筆者(矢吹明紀、フリーランスモータージャーナリスト)の推測だが、トラクタの水素タンク搭載スペースのなさが端的に表れている様にも思える。
ホンダとトヨタ、いずれも使われている燃料電池本体は乗用車用の拡大型だ。それでありながらトラックとしての実用性は、燃料電池本体の信頼性も含めて問題ないレベルで確保されているとのことである。
さて、ここまででトヨタとホンダの燃料電池大型トラックの実用化への道が進んでいることはわかった。それでは、両社はなぜ大型トラックを選択したのだろうか。その答えは明確だ。
トヨタもホンダも、既に燃料電池乗用車の分野では多くのノウハウを蓄積している。その商品は、実用性能の面で問題ないレベルに達した市販車である。今後燃料電池ビジネスを継続する上で重要なことは、量産効果による燃料電池本体のコスト低減だ。そのためには量産車を増やすことが必須である。
ただし乗用車市場での大幅な増加は想定しにくい。その上での大型トラック分野への進出だった。大型トラックはそれでなくても排ガスの面で悪者扱いされがちである。クリーン化の決定版という意味では渡りに船だったことは想像に難くない。そうした利害関係が一致しての協業だったというワケだ。