燃料電池車の本命は「大型トラック」 ホンダ・トヨタはなぜ他社との協業に注力するのか?
先行するトヨタ

そうしたなか、トヨタとホンダは燃料電池による大型トラックの実用化に向けての動きを加速させている。
この分野で先行していたのはトヨタである。2019年4月にはアメリカの大手トラックメーカーであるケンワースとの協業で開発が進行していることが発表された。この時点で実車も完成しており、プロジェクト自体はその少し前の2017年からスタートしていた。
トヨタとしては、実用化のめどが立ったことを確認しての発表だったことは間違いない。その後、2022年まで適宜改良を加えつつ緻密な実証実験がカリフォルニアで行われた。その上で運用に当たっては基本的には問題がないことが確認された。実証実験終了後はそのまま引き続き実用に供されていることから見ても、その完成度は高い。
トヨタがケンワースをパートナーに選んだのは、公的補助金対策などに加えてアメリカ市場でのノウハウを効率良く得るための措置だろう。彼の国でのトラックは「トレーラー + トラクタ」というスタイルが主流な上に、1日に1000マイル(約1600km)以上走ることも珍しくない。
もちろん1日の走行距離が200マイル(約320km)程度の使い方がないわけではない。しかしトラックの航続距離とは「長は短を兼ねる」というのが世界的な共通認識だ。トヨタがケンワースと協業したのは、想定し得る最も過酷な条件を想定してのことだったことは想像に難くない。
ちなみに日本国内大型トラック市場向けでは、2020年からトヨタのグループ企業である日野とのジョイントでの燃料電池大型トラックの開発が始まっている。対してホンダのパートナーはいすゞである。こちらの場合、実車の存在が確認されたのは2022年1月。この年の秋からは公道での走行実証実験が開始され現在に至っている。
一般に燃料電池車は搭載する水素の量をいかにして安全に増やすかにその実用性向上のポイントがある。市街地などでの配送用小型トラックであれば、200km程度の航続距離を担保できるだけの水素を搭載すれば実用化に問題はないかもしれない。しかし大型トラックの場合最低でも500km。できれば1000km以上は確保したい。現時点で使われているのは気体状態での高圧水素タンクだが、これを液化水素として搭載するかでも条件は変わってくるだろう。