戦車の高性能化を支えたのは「航空機技術」だった! ミリオタ以外も知っておくべき、教養としての技術史

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米国のクリスティM1931戦車は400hpの航空機用エンジン「リバティ」が採用されていた。いったいなぜか。

航空機用エンジンの流用が最適解

マークIII戦車
マークIII戦車

 第2次世界大戦における戦車は、このほかにも米国のM3リーやM4シャーマンの一部などで航空機用星型エンジンを採用するなどの例を見ることができた。また戦場で対峙(たいじ)していたドイツの戦車用エンジンもその構造的なルーツはマイバッハの飛行船用エンジンにあった。

 要するに限られたスペースにおいて最大の出力を確保するという戦車にとって重要な設計上の制約をクリアするためには、軽量かつ省スペース、そして大出力だった航空機用エンジンの流用が最適解だったということが実戦を通じて証明されたのである。

 こうした傾向は第2次世界大戦後も継続することとなる。航空機用エンジンをそのままという例こそほとんど無くなった一方で、航空機用エンジンにルーツを持つ構造を採用するという流れは、例えば英国のチーフテンやソ連のT-64で採用されたユンカース流の対向ピストンディーゼルなどにも見ることができた。その後、戦車用エンジンはガスタービンが主流となるが、このルーツも航空機用エンジンにあることは言うまでも無い。

 さて冒頭に記した車両重量とエンジン出力の関係について、最後になったがまとめておきたい。実はクリスティM1931が注目された当時、一部の技術者の間で戦車に十分な機動性を持たせるために必要なエンジン出力は、車両重量1t当たり30hpないし40hpという数字が導き出されていた。この数字はまさにクリスティとその直系だったマークIIIやBT-2にも共通なスペックだった。

 しかしその後1940年代から1950年代に掛けて戦車が装備の充実化と共に大型重量化するに連れて、このレベルをクリアすることはなかなか困難であることに多くの技術者が気付く。さらに1950年代から1970年に掛けて、各国の主力戦車の重量はおおむね40tに達しており、クリスティ並みの機動性を得るためには最低でも1200hpが必要とされたが、実際は700hp程度が限界だった。すなわち機動性もそれなりだったということである。

 一方、1980年代以降になって戦車用ガスタービンエンジンが実用化されると、車両重量50tに対して1500hpをクリアするモデルが珍しくなくなる。ここに来てようやくクリスティと同レベルの機動性が実現したという事実は興味深い。

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