新幹線「2階建て車両」は消滅も、ヨーロッパでは今もバリバリ現役なワケ

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「2階建て車両」は、日本ではあまり多くないが、ヨーロッパでは多彩な車両が運行されている。それぞれの事情の違いを見ていく。

「座って通勤したい人」多く

横2+3列に座席が配置されたフランスの通勤列車(画像:橋爪智之)
横2+3列に座席が配置されたフランスの通勤列車(画像:橋爪智之)

 一方でヨーロッパへ目を向けると、高速列車から通勤列車まで、さまざまなタイプの2階建て車両が運行されている。車体の規格が異なることに加え、2階建て車両を導入しやすい土壌があることも関係している。

 まず、通勤ラッシュが日本と比較すればまだ余裕がある、という点で大きく異なる。日本と同様、昨今はどの国のどの都市も、日本と同じようなドーナツ化現象によって郊外に住居を構える人が多い。その郊外と都心を結ぶ鉄道では、着席を望む人が多く、座席数の多い2階建て車両が好まれる傾向がある。

 途中駅で下車する人は少なく、乗降に支障が出ることもないため、車内の空きスペースいっぱいに座席を設置し、少しでも多くの乗客が座れるような工夫が凝らされており、通路や座席の幅を狭くして座席配列を横2+3列とした車両も存在するほどだ。一見すると日本より大きく見える車体だが、車体の長さはさておき、幅はほとんど変わらず、2800~3000mm程度の車両が多いため、実際はかなりの詰め込みとなるが、それでも座って通勤したい人が多い。

 フランスの首都パリに運行される急行地下鉄RER線には、2階建てながら3ドアを持つ車両も存在する。座席数を増やしたいが、その半面、パリ中心部はヨーロッパの中でもラッシュアワーの混雑が激しい都市のひとつでもあるため、都心部を縦貫するRER線でドアの数が片側2カ所では不足することは否めない。よって本来の「座席数を増やす」という趣旨からは少し外れる部分もあるが、オール2階建てでありながら3ドア車という珍しい車両が出来上がった。

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