新幹線「2階建て車両」は消滅も、ヨーロッパでは今もバリバリ現役なワケ

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「2階建て車両」は、日本ではあまり多くないが、ヨーロッパでは多彩な車両が運行されている。それぞれの事情の違いを見ていく。

日本ならではの事情

非常に低いフランスのホーム。2階建て車両の1階部分はホームの高さに合う(画像:橋爪智之)
非常に低いフランスのホーム。2階建て車両の1階部分はホームの高さに合う(画像:橋爪智之)

 まず都市近郊の列車に関しては、日本のラッシュアワーにおける乗降人数が他国と比較しても桁違いに多く、1階と2階の間に必ず階段を設けなければならない2階建て車両は、駅到着時の乗降に支障をきたすため、日本の通勤輸送に適しているとは言えない。

 また、無駄なスペースを生む上下階を結ぶ階段は極力減らすことが望ましく、必然的にドアの数を減らさざるを得なくなる。もちろん、ドアの数を増やすだけが正解ではなく、現在の主流となっている片側3~4カ所が最適解となっているが、そうなると上下階を結ぶ階段を造れなくなる。

 日本の車両限界は決して大きくないため、2階建て車両の場合では頑張っても片側2カ所しかドアは設けられない。これが都市近郊の列車において、元々乗車する人数が多くなく、着席乗車が原則のグリーン車や座席定員制のライナーなど、ごく限られた用途でしか2階建て車両が導入されない理由だ。

 バリアフリー化という面においても、2階建て車両は不利な面がある。ホーム面と乗降口、客室の高さを極力同じに保つために、当然ながら階段の設置は原則ご法度だ。一時期、座席の高さをかさ上げした「ハイデッカー車両」が人気を博したが、同じ理由でほとんどが姿を消している。2階建て車両の多くが、編成を通じてのオール2階建てではなく、通常の車両と混結されている理由はそこにあると言えるだろう。

 新幹線では、1985(昭和60)年に誕生した100系新幹線を皮切りに、一時期積極的に2階建て車両が導入されたものの、現在は姿を消した。車体重量や空気抵抗の増加により、2階建て車両ではこれ以上の速度向上が難しいため、日本の新幹線では採用を諦めざるを得なかった。

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