航空自衛隊のT-7後継機取得 「官製談合」疑惑が再燃するなか、透明な入札は実現できるのか?

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航空自衛隊のT-7後継機入札では、官製談合の疑念や不透明な決定プロセスが再び問題視されている。整備費用は見積もりの倍に達し、国際的な信頼性も低下している。今後は透明性を確保することが急務だ。

富士重工の不透明入札

T-7(画像:防衛省)
T-7(画像:防衛省)

 航空自衛隊は2025年度の概算要求で、初等練習機T-7の後継機の取得を求めている。今回は、官製談合が疑われるような不公正で不透明な入札が防げるのだろうか。

 元衆院議員の石井紘基(こうき)氏(前明石市長・泉房穂氏が秘書を務めた)は、2002(平成14)年に東京都世田谷区の自宅前で暗殺された。生前、石井氏は数々の政治問題を調査し、国会で具体的な質問を通じて政府を追及していた。筆者(清谷信一、防衛ジャーナリスト)は一度話したことがあり、その姿勢はまさに

「野党議員の鑑(かがみ)」

のようなものだった。

 石井氏が追及していた案件のひとつが、現在空自で使用されている初等練習機

「T-7の採用をめぐる不透明な決定」

だ。この案件には、組織的な官製談合の可能性が極めて高いものが含まれていたが、その後も航空幕僚監部(空幕)は同じことを繰り返し、反省の色が全く見られない。

 現在空自が使用している初等練習機T-7の採用は、ほぼ間違いなく組織的な官製談合によるものだ。T-3の後継機選定は1998年に始まり、多くの企業が提案を行ったが、最終的には富士重工のT-3改(後のT-7)と丸紅が提案したピラタス社のPC-9が競り合う形となった。結果として、富士重工が途中で大幅な値引きを提案し、契約を獲得した。

 そのような大幅な値引きが可能ならば、原価に相当な高マージンを乗せていたことになるし、赤字受注であれば株主から訴えられるだろう。しかし、防衛庁はこの点について特に問題視しなかった。

 しかし、海上自衛隊の次期救難飛行艇開発において、富士重工の会長や中島洋二郎議員らが贈賄容疑に問われるスキャンダルが発生した(1998年)。これにより、防衛庁は同社に1年間の入札参加停止措置を取ったため、次期初等練習機の選定も取り消された。

 本来であれば、次点にあったピラタス社の案が性能面でも価格面でも問題なかったため、そちらを採用すべきだった。ピラタス社のPC-9は世界的に評価の高い名機で、その改良型であるビーチクラフトのAT-6テキサンは米空軍にも採用されている。

 この選択をしなかった背景には、どうしても富士重工に契約を取らせたいという意図があったと考えられる。そもそも、T-7の原型は1953年に初飛行したビーチT-34(これを元にT-3が開発された)であり、設計も時代遅れになっていた。

 その後、選定は仕切り直され、富士重工は再びT-3改(後のT-7)を4.89億円で提案した。一方、丸紅は富士重工の前回の突然の値下げを警戒し、より価格競争力のあるピラタス社のPC-7を3.55億円で提示した。しかし、防衛庁は具体的な根拠を示さず、ライフ・サイクル・コスト(LCC)が安いという理由で富士重工案を採用した。

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