神戸ブランド失墜? 地下鉄海岸線なぜ20年以上も赤字? 累積欠損854億円! 甘い需要予測の裏にあった「根拠のない自信」
日本の地下鉄最大の赤字路線
神戸市営地下鉄の海岸線が2023年度も赤字を続け、20億円を超す経常損失を計上した。利用促進は思うように進まず、市の財政に暗い影を落としている。
平日の午前7時台、通勤ラッシュの時間帯なのに、4両編成の車内はそれほど混雑していない。空席もところどころに見え、都会の路線と思えない雰囲気を感じる。9月中旬、市営地下鉄新長田駅(長田区)を出発した三宮・花時計前駅(中央区)行き列車。三菱重工神戸造船所前にある和田岬駅(兵庫区)で多くの乗客が降りたあと、車内はガラガラになった。
御崎公園駅(兵庫区)から乗車した女子大生(20歳)は三宮で阪急電車に乗り換え、兵庫県西宮市の大学へ通う。
「この時間帯でも混雑しないからうれしい。でも、父はそのうち赤字で廃止されるのでないかと心配している」
という。
この路線は2001(平成13)年に開業した市営地下鉄海岸線。新長田駅から三宮・花時計前駅までの下町を通る7.9kmに10駅が設置されている。しかし、開業以来単年度で黒字になったことがない。
「日本の地下鉄最大の赤字路線」
として有名だ。
乗車人員はコロナ禍前に戻らず
市が9月市議会に提出した2023年度市高速鉄道事業会計決算によると、乗車人員は1日平均約4.8万人の1769万人にとどまった。前年度より7.1%増えたものの、コロナ禍前の2018年度に比べ、3.5%少ない。運賃収入は1日平均約633万円の
「23億1867万円」
2018年度を0.7%下回っている。
経常損失は21億4974万円。コロナ禍が一段落したことで前年度の28億835万円より赤字幅を圧縮できたが、市交通局の別路線である西神・山手線と北神線の計1億2186万円の黒字ではとても埋め切れない状態。市営地下鉄全体の累積欠損は2023年度末で
「854億円607万円」
に達した。
海岸線は協力会社を含めて約8000人が働く三菱重工神戸造船所だけでなく、
・約4400人が勤める川崎重工業神戸工場(中央区)
・大型商業施設の神戸ハーバーランド(中央区)
・観光名所の旧居留地(中央区)
・プロサッカークラブ・ヴィッセル神戸の本拠地となるノエビアスタジアム神戸(兵庫区)
の近くを通る。それなのに、低迷を抜け出せない。