世界最大の鉄道車両メーカー「中国CRRC」、欧州にいまだ本格参入できない残念事情

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世界の鉄道車両メーカーで売上高世界シェア1位の企業は「中国中車」、いわゆる「CRRC」だが、まだヨーロッパには本格進出できていない。その背景を解説する。

チェコでは断念

イノトランスにおけるCRRCのブース。世界一のメーカーだけに一際目立つ大きさだったが来訪者はアジア系の人たちが目立った(画像:橋爪智之)
イノトランスにおけるCRRCのブース。世界一のメーカーだけに一際目立つ大きさだったが来訪者はアジア系の人たちが目立った(画像:橋爪智之)

 CRRCはこれまで、ヨーロッパの3つの鉄道会社と車両導入について契約を交わしている。そのうちのひとつはチェコの民間鉄道会社レオ・エクスプレスで、3編成プラスオプション30編成という契約だった。

 レオ・エクスプレスはチェコ国内を中心に列車を運行し、いずれは近隣諸国への乗り入れを検討していたが、現在保有するスイスのシュタドラー製車両は直流区間専用車だったため、周辺国への乗り入れができなかった。そこで複電圧の新型車の導入を検討していたところ、CRRCが話を持ち掛けた。CRRCは、交直両用の連接式電車「シリウス」3編成を納入する契約を交わし、これがヨーロッパにおける初めての本格的な車両受注案件となった。

 ところが、その後はうまく事が進まなかった。ヨーロッパで列車を運行するためには、非常に難解な認証試験をパスしなければならないのだが、これに苦戦してしまう。2019年にテストを開始してから、2年以上かかってもクリアできなかったため、2022年4月にレオ・エクスプレスはCRRCとの車両納入契約を破棄、オプションも含むすべての契約が白紙撤回となってしまった。皮肉なことに、その数カ月後に認証試験をパスし、ようやく本線上で試運転が可能となったが、それも後の祭りだった。

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