「女性の性被害が多い」 SNSで話題の「東京・水元公園」は本当に危険なのか? 葛飾区の治安データから読み解く、SNSの危うさと真実とは

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水元公園が危険だという噂が広がっているが、実際の犯罪統計を見てみると、161件の犯罪が発生しているのに対し、新小岩では429件、亀有では376件と比較して相対的に安全だ。2020年の性犯罪事件以外の重大な事件はほとんど報告されていない。SNSの偏見に惑わされず、豊かな自然環境を楽しむべきだ。また、地域住民の協力も大切だ。

SNSで危険情報拡散

水元公園の航空写真(画像:国土地理院)
水元公園の航空写真(画像:国土地理院)

 X(旧ツイッター)で「水元公園」が危険だという投稿が拡散され、注目を集めている。この騒動は2024年10月14日頃に始まった。水元公園は東京都葛飾区にある広大な公園で、ジョギングや散策、ピクニック、バードウォッチングなど、さまざまなアクティビティが楽しめる自然豊かな場所だ。公園の開園面積は、なんと東京ドーム約21個分に相当する96万3631平方メートルに及ぶ。

 きっかけは、水元公園の魅力について語るユーザーの投稿だった。その投稿に対し、別のユーザーが反論し、水元公園で未報告の女性への性被害を多数知っていると主張した。さらに、そのユーザーは自分が直接目撃したとまでいっている。驚くことに、この反論の投稿には

「11万」

を超える「いいね」が集まり、瞬く間に拡散した。これにより、水元公園の評判は大きく揺らいでいる。

 しかし、本当にそれほど多くの事件が起きているのだろうか。実際の状況を確認するために、新聞データベースで調査してみた。直近の事件としては、2020年11月に発生した事件がある。この事件では、21歳の男が朝の時間帯にジョギング中の40代女性を狙った。男は性的暴行を目的として被害者を押し倒し、カッターナイフを突きつけて脅迫したという。この事件は確かに深刻だが、SNSで主張されているような

「頻繁な犯罪発生」

とはかけ離れている印象だ。むしろ、この一件が報道されていること自体が、水元公園での重大事件がいかにまれであるかを示唆しているといえる。

 さらに、水元公園が危険だということを示す事件は、公園の開園以来ほとんど報じられていない。報道されているのは、

・自殺
・死体遺棄

が数件ある程度だ。

 性被害に遭った女性が通報をためらい、事件化していない可能性も考えられる。実際、法務省の「第5回犯罪被害実態(暗数)調査」(2019年)によると、過去5年間の性的事件で警察に被害届を出した人はわずか14.3%だ。性犯罪は暗数(統計に表れている数字と実際の件数の差)が多く、統計に表れていない実態があるのは確かだ。

 しかし、それを考慮しても報道された事件が

「極めて少ない」

という事実は注目に値する。

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